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  • 花林舎動物記 第2回 アオダイショウは可愛い

    2008年7月31日花林舎

     6月から「花林舎動物記」という楽しい動物のお話を読み切りで掲載しています。 この「花林舎動物記」とは、滝沢村にある(株)野田坂緑研究所発行(所長 野田坂伸也氏)の会員限定情報誌「花林舎ガーデニング便り」の中で最も人気がある連載記事です。今月は第2回「アオダイショウは可愛い」です。


    蛇の出没する職場
     花林舎の敷地には、相当数の蛇が棲みついているようです。"1匹の野生動物を見かけたら、そのあたりに10匹はいると考えられる"そうですが、それが正しいなら、およそ80匹のアオダイショウ、15匹のマムシ、5匹のシマヘビが花林舎周辺の1ヘクタールに潜んでいることになります。
     先年まで我が社に勤めていた女子社員は蛇が大嫌いで―まあ、男でも女でも蛇が好き、という人にはまだ会ったことはありませんが―大きな蛇に出くわすと、へなへなと腰を抜かして歩けなくなりましたが、彼女のいうところでは、蛇が近くを移動している時はズー、ズーとすべる音がするので、それが聞こえると背筋が寒くなるのだそうです。
     私は蛇が好き、というわけではありませんが、後で述べるような理由で今では「アオダイショウは結構可愛い奴だなあ、なんとか手なずけられないかな」なんて考えています。
     花林舎界隈に出没する蛇の大半がアオダイショウですから、今回はアオダイショウについてお話しすることにしましょう。

    美しい緑色の蛇
     1年に1から2回ですが我が家のあたりで緑色に光る美しい蛇を見かけることがありました。長さは初めて現れた頃は1メートルくらいでしたが、数年たつうちに1.5メートル近くになっていました。大きさ、太さ、頭の形などから見てアオダイショウの色変わりだろうと判断しました。濃い緑色で本当に美しく、時々見かけるのが楽しみでした。
     ところがある年、女子社員とパートの女性がこの蛇に出会って震え上がってしまいました。私にはこの上なく美しく感じられる緑色が、2人には不気味で気持ち悪くて耐えられないのだそうです。そして、「社長は責任を持ってあの蛇を殺してくれ」と恐ろしいことを言い張るのです。
     それまで1年に1回か2回しか出くわすことのなかった緑蛇が、慣れてきたのかその年は度々出没したのが悲劇の源でした。
     彼女達の強硬な要請を請けた翌日、私はこの緑蛇が堆肥製造所のところをウロウロしているのを見つけ、簡単に捕まえてしまったのです。しかし殺すのは嫌なので2キロメートルほど離れた山林に放してやりました。「いつか戻ってこいよ」と、こっそり言い聞かせながら。
     彼女達には、遠くに捨ててきたからもう大丈夫と説明して安心させました。
     ところがその次の日、なんとまた緑蛇が現れたのです。女子社員は「蛇は捨てられても戻ってくるっていうけど、私があまり殺してというから私を恨んで帰ってきたんだわ」とうわごとのように言って真っ青になり、今にも卒倒しそうになりました。
     この時「その通りだよ。だから蛇はそっとしておいてやろうよ」と言えば、少なくとも1匹の緑蛇はまだ花林舎の近くに棲みついていたはずなのです。私は馬鹿なことに、というより彼女が本当に卒倒してしまったら大変だと恐ろしくなって、「犬や猫なら2キロメートルくらい簡単に戻って来れるけど、蛇が帰ってくるはずはないよ。もう1匹いたんだよ」と彼女を慰めてその蛇も捕まえて捨ててきました。
     それから緑蛇が出てくることはなくなりましたが、今考えると実にもったいないことをしたと後悔しています。あんなに美しい蛇を見ることはもうないでしょう。アオダイショウがあんな色になるのはどれくらいの確率なのでしょう。かなり貴重な蛇だったのではないでしょうか。女子社員は1年後には我が社を辞めてしまいましたから、緑蛇を見つけても捕まえずに追い払うくらいにしておけばよかったのです。
     もしかしたらあの2匹は夫婦で、捕まえないでおけばその子供の緑蛇がたくさん増えて、野田坂緑研究所は「緑蛇研究所」になったかもしれません。かえすがえすも残念です。
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    堆肥と蛇
     蛇は堆肥が好きなようです。軟らかくて暖かいし、堆肥所には屋根がかかっていて乾いているのも快いのでしょう。
     花林舎のビニールハウスの中に2メートル四方の木枠を作り、ススキや沿道の雑草を刈ってきて積み込み、堆肥を作っているところがありました。堆肥の上には乾燥防止のために麻袋をかけてありますが、その下に春から夏にかけてアオダイショウが集まってきて、気持ち良さそうにまどろんでいます。
     一番多い時は8匹いましたが、ボス達の特等席になっているのかどれも大物で、ぬけ殻を測ってみたら最短120センチ、最長170センチでした。8匹もいてケンカもせずじっとしています。
     野外で人が蛇に近付いていくと、マムシや大きいシマヘビは逃げないで人を威嚇することがありますが、ほとんどの蛇はするすると藪の中へ姿を消してしまいます。
     しかし我が社の堆肥製造所にやってくる蛇は、私がよほど近くまで行かないと逃げようとしません。こんな居心地のいいところを去るのは嫌だ、と思っているのでしょう。また、蛇が集まってくるころになると私以外は堆肥所に近付かなくなりますし、私は蛇をいじめませんからアオダイショウ達は安心しているのでしょう。
     私が近付いていくのをいつも堆肥所の隅で麻袋からちょっと頭を出して見ているアオダイショウがいました。私と視線が合うと「しまった、見つかった」というように急いで麻袋の下に隠れてしまいます。
     それが実に可愛くて、私はそれが契機になってだんだんアオダイショウが好きになってきました。それまでは灰緑色の肌の色が汚いので嫌だったのですが、こうして毎日のように会っていると、この蛇はまことにおとなしく温和な性質で、決して人には歯向かってくることがないということがわかってきました。
     アオダイショウが口を開けて歯向かうのを1度だけ見たのですが、それは我が家の犬がその蛇を噛み殺そうとしたので、やむなく必死になって抵抗したのです。推測ですが、これだけアオダイショウがいると、マムシなど他の蛇は追い払われてしまうのではないでしょうか。アオダイショウがマムシ除けになっているのではないかと思うのです。なんといってもアオダイショウは身体の大きさでは日本の蛇では1番ですから、毒蛇のマムシもかなわないのではないでしょうか。暖地では2メートル以上にもなるそうですが、これまでのところ花林舎では最大で1.7メートルです。しかし、こうして人間と平和共存していますので、もっと大きくなるでしょう。そのうち花林舎の入口に「大蛇が出ますので注意して下さい」という看板を立てなければならなくなるかもしれません。

    ぬけ殻
     晩春の頃、堆肥製造所あたりでは、あっちにもこっちにもアオダイショウのぬけ殻が落ちています。セロファン紙のような薄い皮が、よくこのように破れもしないで、蛇の形を保って抜けるものだと感心します。目の形もきれいに丸く残っています。
     口のところだけ皮が破れていますから、大きく口を開けておいて、そこから抜け出てくるのでしょう。脱ぐ皮がひっかかるようにザラザラした板などがあるところがいいようです。
     昨日は見つけたぬけ殻を全部とっておいたら10本ほど集まりました。もっとも、よほど丁寧にとらないとちぎれてしまいますので、満足な形のものは少なかったのですが。
     蛇のぬけ殻を財布に入れておくと金持ちになる、という言い伝えがあります。こういうことを信じる人が増えれば、私は金持ちになれます。アオダイショウのぬけ殻、長さ10センチで1000円。どうですか。買いませんか。


    花林舎動物記 第1回 ナメクジ退治