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  • 第19回マムシ家族

    2010年1月28日花林舎

    花林舎動物記
     平成20年6月から「花林舎動物記」という楽しい動物のお話を読み切りで掲載しています。この「花林舎動物記」とは、滝沢村にある(株)野田坂緑研究所発行(所長 野田坂伸也氏)の会員限定情報誌「花林舎ガーデニング便り」の中で最も人気がある連載記事です。今回は第19回「マムシ家族」です。

    第19回マムシ家族

    花林舎で見られる蛇の種類
     2008年は、マムシとこれまでになく多く出会った年でした。その2年前までは青大将が多く、堆肥小屋に8匹も重なり合って休んでいるのを見たこともあります。最長で170センチ(尻尾を持ってぶら下げて私の背と比べてみたものや、ぬけがらを測定したもの)もありましたから、花林舎の敷地は青大将が制圧していて他の蛇類は小さくなって暮らしているのだろうと推測していました。
     他の種類は稀にしか見かけないのですが、堆肥舎の一部に以前作った地下の室(深さ50センチ、縦×横=2メートル×1メートル)の蓋を開けて見たら、150センチほどもあるヤマカガシとその子分と思われる数匹が潜んでいて驚いたことがありました。このヤマカガシの親分はその後不運にも我が家の犬に噛み殺されてしまいました。
     シマヘビにはめったにお目にかかれません。昨年は二度ジムグリと思われる頭の小さい滑らかな肌をしたとてもおとなしい蛇に会いました。一度はその名の通り地面の中に潜って行って姿を消してしまいました。
     さて、本題のマムシですが、社宅の物置のあたりに1匹住みついていて、これには3~4回出会っています。色は地味な灰褐色で大きさは中位、典型的なマムシ体型です。物置の脇に堆肥を造る木枠を造ってあるのですが、そこに雑草を投げ込もうとして近寄った時、木枠の前にいて、危うく踏みつぶすところでした。一生懸命逃げようとしているのですが木枠にさえぎられて逃げられないのです。逃げる方向を横に変えればいいのに本当に間抜けなマムシでした。あわてふためいて、「助けて、助けて」と言っているような姿がおかしくていっぺんで好きになってしまいました。1年に1回くらいこの付近で出会いますが少しずつ大きくなっています。
     昨年の秋に出会った時は木枠の中の堆肥の上でトグロを巻いていました。トグロを巻いている時は1メートルくらいは跳び上って噛みつくことがあると聞いていましたから、少し離れたところから見ていたのですが、相手もじっとこちらを見て動きません。「君に危害を加えるつもりはないからね」と言う私の気持ちが分かるのか、穏やかな表情でした。今は多分この堆肥の下で冬眠しているのでしょう。



    極彩色の大マムシあらわる

     2008年の5月の連休に、東京から3人の助っ人が来て植物育成用のハウスの改造をしてくれました。古くなった羽目板を取りはずしていたOさんが、「グワーッ」と大声をあげたので駆けつけて見ると赤と黒のダンダラ模様の太い大きな蛇がゆっくりと動いているではありませんか。Oさんは、丁度60歳になった人生経験豊かな才人なのですが「長いものだけは苦手で・・・」グワーッとなってしまったのです。
     赤黒ダンダラの長いものは、ゆっくりと移動しながら板の隙間に頭を突っ込んでいったのですが、狭くてそれ以上入っていけません。無毒の蛇を捕まえる時は私は尻尾を足で踏んで動けなくしておいてから、捕まえてぶら下げるのですが、Oさんが「これはヤマカガシだ」と叫ぶので、ちょっとためらいました。ヤマカガシはご存知のように毒蛇で、稀にですが噛まれて死ぬ人がいます。
     しかしこの蛇は動きがばかにのろく頭を半分突っ込んだまま立ち(?)往生しているのでもうめんどくさくなって左手で尻尾を持って持ち上げてしまいました。右手にはビニール袋を持って、頭からそっとこの中に落とし込んでしまおうという魂胆です。目測でほぼ1メートルあります。ところがぶら下げて眺めているうちに大変なことに気付きました。あまり毒々しい赤色なのでてっきりヤマカガシだと私も思いこんでいたのですが、胴体にはマムシの特徴である銭型模様が並んでいるではありませんか。
     一つ気付くと胴体の太さもヤマカガシではなくマムシであることを示しています。頭部を見ると顎のえらが大きい三角形です。間違いありません。それにしてもおとなしいマムシです。長年山仕事をしてきた知人が「他の蛇は尻尾を持ってぶら下げてもいいが、マムシは頭を持ち上げて噛みつくから絶対やるな」と何度も注意されていたのにこのマムシはだらんとぶら下がったままです。それにしても大きいマムシでした。青大将なら1メートルはまだ小物ですが、ずんぐりむっくり型のマムシは1メートルというのは滅多にいません。これは大変だ、と思ってビニール袋に入れて口を閉めました。見ていたヤジ馬たちは「殺せ、殺せ」と叫んでいましたが、私は蛇を殺すのは嫌なので200メートルほど離れた畑の隅に放してきました。袋から出されても動きもしません。この時になってようやく気がついたのですが、5月初旬なのにこの年はとても寒く、マムシは冬眠からは覚めたもののまだ活発に動くほどの体温になっていなかったのです。暖かい春だったら私はこの大マムシに噛まれて死ぬか生きるかの大騒動になっていたでしょう。本当に何が幸いになるか分かりません。

    再び現れた極彩色大マムシ
     それから1ヵ月ほどしたある日、ハウスの中で働いていた妻と実習生の若い女性が、「あのマムシが現れた」と言ってきました。2人が作業している作業台の横にはまだ改造が済んでいない羽目板があるのですが、そのあたりのどこかから現れて2人から2メートルから1メートルも離れていない棚の上を横切って行ったというのです。まことに危険極まりない話です。あるいは捕えて捨ててきた私を怨んで復讐しようと機会を狙っているのかもしれません。2人の話によれば大きさ、色ともあの大マムシにそっくりです。しかし、200メートルの距離を間違いなくここに戻ってくるとも思えません。
     それから1週間くらいの間に三度も姿を見せましたのでこれは放っておけないと思い、未改修の羽目板を剥がしてその後ろの蛇が潜みそうな穴などを全部つぶし、羽目板は隙間の無いしっかりした板張りに変えました。板にはクレオソートを充分にしみ込ませましたので、これも蛇除けには役立ったと思います。それから大マムシはその付近には姿を見せることは無くなりましたが、20メートルほど離れた場所で実習生が一度見たとのことでまだこの辺にいることは確かです。
     ハウスの反対側に以前小屋を壊した時にとっておいた板や角材を積んであるのですが、私はここで二度ほど小さいマムシに会っています。どうもこの辺にもマムシが棲みついているようです。木曜日の午前にボランティアの人達が植物園造りの手伝いに来てくださるのですが、マムシ騒ぎから2週間ほどした木曜日に、「この辺にはよくマムシが出ますから気を付けてください」とボランティアの人達に説明していると「ほら、そこにいますよ」と言われて振り返ると1メートルほど離れたところに例の極彩色のマムシがいるではありませんか。ただ、5月の連休に捕まえたマムシよりは小さく色、模様も少し違います。あのマムシの子供かもしれません。

    マムシ家族を発見
     その後はずっとマムシと遭遇することは無かったのですが、ハウス周辺に棲みついていることはほぼ間違いないので、冷や冷やしながら過ごしました。7月には例年通り近くにスズメバチが巣を造りましたので、こっちも気を付けなければいけません。こんな状態では植物園が完成しても恐ろしくて見に来る人はいないでしょう。なんとか真剣に対策を考えなくてはいけません。
     11月になってハウスの改造工事を再開し、積んである板や角材を使用することになりました。この堆積物のどこかにマムシが潜んでいることはほぼ確実ですから板を引っ張り出すときは随分神経を使いました。まず板を上からガンガン叩いてそれから5~6分してからその板を引きあげます。この繰り返しで板を全部取りはずして近くの場所に縦にして立てかけました。幸いマムシは現れません。とうとう最後の1枚になりました。地面に触れると板が腐りますから横木を置いてその上に置いてある幅広の1枚をひょいと持ち上げると...
     いました。あの5月のマムシそっくりの極彩色のマムシが3匹平行に並んで潜んでいたのです。1匹は大物で1メートルくらいあります。2匹は60センチくらいで太さもかなり劣ります。しかし色模様はそっくりで、親子であろうと推測しました。
     すると私が5月に捕えて捨ててきたマムシはこの大物の夫か妻ということになります。その後出没した大物は行方不明になった連れ合いを探してその辺を動き回っていたのではないでしょうか。可哀そうなことをしてしまいました。しかし、なるべくならいてほしくない家族です。どうしたものかと私は迷っています。
     この日は3匹はスルスルと草むらの中に姿を没してしまいましたが、まだこのあたりに潜んでいることはほぼ間違いありません。マムシもこっちが先に気付けば危険はありませんが、出会い頭ということもありますから油断できません。また、めぐり来る春にはどんなことになるでしょう。
    マムシ家族。
    マムシ家族。



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