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  • 第21回ネズミは至る所に―(2)

    2010年12月23日花林舎

    花林舎動物記
     平成20年6月から「花林舎動物記」という楽しい動物のお話を読み切りで掲載しています。「花林舎動物記」とは、滝沢村にある(株)野田坂緑研究所発行(所長 野田坂伸也氏)の会員限定情報誌「花林舎ガーデニング便り」の中で最も人気がある連載記事です。
     前回まで『すこやかな暮らし発見、岩手から。「家と人。」』という雑誌から野田坂伸也氏の記事「風景と樹木」を抜粋し、転載させていただいておりましたが、今回はふたたび「花林舎動物記」に戻り、第21回「ネズミは至る所に(2)」をお送りいたします。

    第21回「ネズミは至る所に―(2)」

    忍者ネズミ
     ネズミをとらえる器具は様々ありますが、一般家庭で一番よく使われるのは金網でつくった籠状のネズミ捕り器でしょう。我が家でもこれを使っているのですが、これではどうしても捕まらないネズミがいました。
     このネズミ捕り器は籠の中に餌をとりつける針金が下がっていて、ネズミがえさを食べようとすると留め金が外れてふたが閉まり、ネズミは籠の中に閉じ込められるようになっています。ふたが閉まっていればネズミがえさを引っ張ったということです。ところが、ふたは閉まって餌はなくなっているのにネズミはいない、ということが4~5回続きました。一回は、ネズミが入っていたのですが夜遅かったのですぐに殺してしまわずに、明日の朝処分しようと思ってそのままにしておいたら、翌朝にはネズミはいなくなっていました。このネズミは小さなハタネズミでしたが、だからといって金網の目の間から抜け出られるほど小さくはありません。まことに不思議です。どうやって抜け出したのか今もわかりません。しょうがないので、〝忍者ネズミ〟がいるのだということにしました。

    クマネズミ連続逮捕
     クマネズミは山の中には住んでいませんので、我が家に出没するクマネズミたちは、多分この家に引っ越してくる時に荷物の中に潜んでいて一緒にやってきたのでしょうが、ハタネズミほどしょっちゅう悪さをするわけではなく、たまに姿を見せるだけです。
     車庫の隅にガラクタを積み重ねて置いたあたりで繁殖したことがありました。犬たちが興奮してガラクタの周りを走り回るので「ネズミがいるな」と気づいて、ネズミ捕り器をしかけました。翌朝、行って見ると梅太郎(我が家の犬)が鼻を血だらけにして吠えています。なんとネズミ捕り器の中にクマネズミが4匹も入っていたのです。梅太郎はそのネズミたちを捕らえようとして、ネズミ捕り器に噛みついて鼻を血だらけにしていたのでした。クマネズミは大きいので4匹も入っていると動き回るのも不自由に見えるほどで、驚きました。それにしても、野生動物にしては警戒心の薄い動物だなと思いました。仲間が籠の中に入って出られなくなっていたら、警戒して近づかないようにするかと思いのほか、4匹も入ってしまうのですから。
     我が家の犬たちはネズミを捕るのが大好きで、ネズミを見ると気違いのように興奮しました(過去形になっているのは、年をとって全部死んでしまったからです)。家の前の広い麦畑の刈り取りが終ると、跳んで行ってハタネズミ探しをするのが常でした。1時間で10匹のネズミを捕ってきたことがあります。ネズミは捕らえても食べることはほとんどなく、いたぶっておもちゃにして遊んでいるだけでしたが、たまには喰ってしまうこともありました。こういう時にこっちの顔をなめられたらたまりませんが、知らないでそんなことになっていたこともあったかもしれません。
     勝手口に1坪ほどの下屋(げや。簡単な屋根と壁のあるところ)があります。ここに梅太郎の犬小屋を置いてありました。犬小屋といっても雨の当たらないところですから、ほぼ80センチ四方の単なる木の箱です。梅太郎は夜は外の犬小屋に寝るのを嫌がって、下屋の中で寝ていました。多分、夜にはキツネなどが徘徊することがあるので怖かったのでしょう。
     梅太郎が時々犬小屋の床を爪先でひっかいたり、床下に向かって吠えたりすることがありましたが、ある朝、梅太郎の小屋の上に長さ160センチほどの青大将が悠然と寝ていました。下では梅太郎が寝ています。梅太郎はこのころ蛇を見つけると襲いかかって胴体に噛みつき、振り回して殺してしまう習性を身につけていましたので、青大将が見つかったら大変です。それにしてもどこを通ってやってきたのでしょう。よく無事にこんなところにたどりついたものです。
     また別の日は、昼下がりのころでしたがやっぱり同じくらいの大きな青大将が下屋の入り口にいて、私が近づくとためらいもせずに下屋の中に入り込み、梅太郎の小屋の下にするすると潜っていってしまいました。ですから梅太郎が犬小屋の下に向かって吠える時は、青大将がひそんでいるのだろうと思っていました。
     ところがそうではありませんでした。梅太郎が死んでから中の汚れたワラを捨てるために犬小屋を外へ出したら、その下にクマネズミが数匹棲み着いていたのです。たちまち逃げて行ってしまいましたので何匹いたのか正確にはわかりませんでしたが5匹くらいはいたようでした。犬小屋を元に戻した後、ネズミ取り器を置いたら翌朝1匹入っていました。実に簡単に捕まったので拍子抜けしてしまったほどです。そして次の日も、また次の日も1匹ずつ入っていました。やっぱりクマネズミは警戒心が乏しいようです。次々に家族が捕まってしまうのに平気で次の逮捕者が出てくるのですから。結局この時は連続4匹捕まえて終わりました。ただ、毎日1匹ずつで、前の時のように一度に数匹入っているということはなかったのです。
     さてそれではこれで我が家に巣くうクマネズミは絶滅したかというと、そんなやわな奴らではありません。さすがに、最後のネズミは罠にかからなかったようで、しばらくしてからまた現れました。このような判断は何がさせるのでしょうか。不思議です。ネズミとの付き合いは永遠に続くでしょう。

    ネズミの殺し方
    ネズミ捕りの籠に入ったネズミ。 ネズミを捕まえると殺さなければならないのですが、いくら憎い相手でもこれは嫌な作業です。ネズミ退治の方法には実に様々なやり方があって、本が一冊書けるほどなのですが、捕まえたネズミを殺す方法としてもっとも簡単なのは水に入れて窒息死させることです。かわいらしいハタネズミはもちろん憎々しい面構えをしているクマネズミでも、籠ごと水の中に入れられて、慌てふためいて逃げ道を探して走り回りやがて動きが止まり、ぽかんと浮いてくる姿を見ていると哀れだなあと思います。苦しまないで死なせてやる方法はないものかといつも考えるのですが、ネズミは短時間で水死してしまうのでこれが一番いいのでしょう。
    粘着性の液が塗ってある厚紙にくっついて動けなくなったネズミ2匹。 粘着液を塗った紙にくっつけて捕まえる方法がありますが、厚紙の上に腹ばい
    になって必死になってうごめいているネズミを見ると、これはもっとも残酷な死に方かもしれないと思い、目をそむけてしまいます。誰がこんなものを発明したのでしょう。この方法でネズミを捕らえるたびに、自分はもう天国には行けないのではないかと考えるのですが、家の中に入り込むハタネズミには、この方法が最も効果的なのです。南無阿弥陀仏。



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