東日本大震災における道路啓開等作業従事者証言集

 東日本大震災における被災現場の最前線で、地元建設業者は人命救助活動や道路啓開作業、応急・復旧作業などにあたりました。その活動は、震災当日から翌日にかけて始まっていました。
 
 地元を熟知して、重機類を保有する地元建設業者は当初、緊急車両などの通行を確保する為の道路啓開作業(1車線だけでも通行できるようにする)が主な活動でした。行政や地元住民との信頼関係を築いていたことが迅速な活動につながりました。
 
 "『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~"では、最前線で作業にあたった方々の「生の声」をお伝えします。建設業者が果たした役割について再確認するとともに、震災の実情を風化させないことを目的としております。
 
 第3回は新光建設(株)工事課長 中村 明 さんです。


 新光建設(株)(釜石市)工事課長 中村 明 さん(51 歳:震災当時)
 《職種》現場代理人統括
 《啓開作業時の作業内容》指示役および全体の世話役

新光建設(株) 工事課長 中村 明 さん



「家族が無事だったからこそ頑張らないと」

―震災発生直後の状況は。

 3月11日は現場を担当していた奥州市胆沢区に出張中でした。地震の直後から4時頃までは携帯電話やメールがある程度使えたのですが、「釜石が大変なことになっている」という以上の状況は把握できませんでした。

 当日中に釜石に帰りたかったのですが、道路が寸断されて通行できないとの情報があり、旧仙人道路経由で釜石に入ったのは3日後の14 日。支部事務所の先にある五ノ橋から先は自動車が通行止めでしたから、近くの空き地に車を止めさせてもらい、会社のある平田まで歩いて向かいました。


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写真提供 新光建設(株)


―釜石入り後は、どのような業務に当たったのですか。

 私は主に災害対策本部で全体の世話役を担当しました。お互いの状況把握と県から情報提供や指示の円滑な伝達のため、しっかりとした指示系統が必要でしたので、まずは各社の保有機械や人員の確認・分析をした上で、4月末には支部長をトップにする組織を立ち上げました。

 クラスや企業ごとにそれぞれ人や機械の状況は異なるため、私を含み各地区から選任した世話役4人が全体的な課題の分析に当たり、各ブロックではブロック長が統括する形を取りました。私自身は、警察や県との打ち合わせがメインで、問題が出た場合に即時連絡できるよう、各ブロック長に加えて現場連絡員を配置しました。


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―指示を出す際には、どのような点に留意されましたか。

 行方不明者がまだ多くいたので、万が一にもご遺体を傷つけることがないよう、慎重に作業を進めてほしいということ。また作業場所の周辺にいる被災者の方に絶対に怪我をさせないよう注意しました。

 お年寄りが重い荷物を持ちがれきの上を歩くような状況でしたから、道路がなければ食料や物資が避難所まで届けられません。とにかく一刻でも早く道路を啓開し、最低でも車1台分が通過できるルートを確保しようというのが一番でした。


新光建設(株) 工事課長 中村 明 さん


―ご家族は心配されたのでは。

 私の家族は全員無事だったので、安心して仕事に専念することができました。家族が行方不明という人が大勢いる中、家族が無事ということはそれだけで幸せなこと。だからこそ自分が頑張らないといけないと思っていました。

 それでも避難所を回って行方不明の家族を探している人や、倒壊した家の前で泣いている人を見るのは、つらかったですね。私たちには道路を啓開するという明快な目標があったのですが、被災者の方の中には、魂が抜けたように町をさまよい歩いている人もいました。作業員の中には同じような境遇の人もおり、だからこそ「俺たちが何とかしなければならないな」という思いが強かったと思います。



(おわり)


『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~
第38回(最終回) (株)山千(大槌町)代表取締役 山崎 真さん
第37回 (株)藤原組(大槌町)専務取締役 藤原 士さん
第36回 松村建設(株)(大槌町)土木部長 松村康文さん
第35回 (株)共立土木(陸前高田市)工事課長 鈴木正幸さん
第34回 (株)かねまつ建設(陸前高田市)取締役専務 菊池秀明さん
第33回 (株)長谷川建設(陸前高田市)営業部長 吉田昭彦さん
第32回 南建設(株)(軽米町)取締役社長室長 田中一也さん
第31回 (株)中舘建設(二戸市)土木部長 大鳥義博さん
第30回 成和建設(株)(花巻市)重機車両部執行役員部長 民部田正道さん
第29回 (株)小原建設(北上市)小田島愼さん
第28回 髙惣建設(株)(奥州市)高田営業所長 小野寺正晴さん
第27回 (株)山友建設(一関市)熊谷堅美さん
第26回 (株)山喜建設(一関市)三浦公夫さん
第25回 横田建設(株)(一関市)高田営業所長 新沼克則さん
第24回 鈴木工材(株)(一関市)菊地勝則さん
第23回 宇部建設(株)(一関市)工事副長 千田祐欣さん
第22回 (有)矢萩建設(一関市)重機主任 関村一男さん
第21回 吉田建設(株)(盛岡市)三浦一春さん
第20回 盛岡舗道(株)(盛岡市)機械係長 高橋直美さん
第19回 三陸土建(株)(盛岡市)伊藤成美さん
第18回 松田重機工業(株)(遠野市)重機部長 菊池隆悦さん
第17回 佐藤工業(株)(遠野市)飯森清幸さん
第16回 (株)テラ(遠野市)常務取締役 小笠原秀夫さん
第15回 (株)晴山石材建設(野田村)上川寿隆さん
第14回 (株)晴山組(野田村)山田 勉さん
第13回 兼田建設(株)(久慈市)大尻明男さん
第12回 佐藤建設(株)(田野畑村)常務取締役 片座康行さん
第11回 富山建設(有)(山田町)代表取締役 富山由光さん
第10回 三好建設(株)(宮古市)土木部次長 小川 司さん
第9回 大崎建設(株)(田野畑村)橘 良友さん
第8回 工藤建設(株)(岩泉町)土木部技士 西倉淳也さん
第7回 刈屋建設(株)(宮古市)五十嵐 和朗さん
第6回 (株)小松組(大船渡市)代表取締役 小松 格さん
第5回 (株)青紀土木(釜石市)萬 寛さん
第4回 佐野建設(株)(釜石市)八重樫充さん
第3回 新光建設(株)(釜石市)工事課長 中村 明さん
第2回 (株)中澤組(大船渡市)機材主任 霜山 隆さん
第1回 (有)熊谷技工(大船渡市)専務取締役 熊谷芳男さん



『記録誌第3号「記憶を思いに 未来につなげる」~震災復興5年の記録 これからも地域とともに~』に収録しております。