東日本大震災における道路啓開等作業従事者証言集

 東日本大震災における被災現場の最前線で、地元建設業者は人命救助活動や道路啓開作業、応急・復旧作業などにあたりました。その活動は、震災当日から翌日にかけて始まっていました。

 地元を熟知して、重機類を保有する地元建設業者は当初、緊急車両などの通行を確保する為の道路啓開作業(1車線だけでも通行できるようにする)が主な活動でした。行政や地元住民との信頼関係を築いていたことが迅速な活動につながりました。

 『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~では、最前線で作業にあたった方々の「生の声」をお伝えします。建設業者が果たした役割について再確認するとともに、震災の実情を風化させないことを目的としております。

(第16回より、内陸からの後方支援を掲載します)

 第16回は遠野市の(株)テラ 常務取締役 小笠原秀夫さんです。

 (株)テラ 常務取締役 小笠原秀夫さん(54歳:震災当時)
 《啓開作業時の作業内容》指示役

(株)テラ 常務取締役 小笠原秀夫さん



「結果としてこちらに支援に来て良かったと思いました」

―貴社は震災当日から遠野支部の沿岸部支援において、中心的な役割を果たしたと思いますが

 当日、遠野支部長である社長に対して、釜石・大槌方面への支援要請が県からありました。社長が中心になって、会員企業に連絡を取り、深夜までかけて重機やダンプの台数を確保しました。

 

―小笠原さんはどちらに向かいましたか

 12日朝、笛吹峠を越えて釜石市の鵜住居に向かいました。その日は人命救助が優先で、待機だけで終わりました。翌日から、鵜住居の釜石遠野線、大槌町に向かう国道45号線を啓開する班の指示役を務めました。食料などの支援物資を、内陸から大槌町に運べるようにするためです。

(株)テラ 常務取締役 小笠原秀夫さん

―現地の状況はどうでしたか

 現地を見たときは信じられない思いでした。戦争でも起きたかのような錯覚を覚えるほどでした。

 また、釜石遠野線から国道45号線に向かう人たちが立ち往生していました。山長建設と当社で、開通したばかりの釜石山田道路にスロープを作り、釜石、大槌方面に向かえるようにしました。

 

―大槌に入ったのはいつごろですか

 16日には大槌に入りました。町内では大槌病院から役場に向かうルートを先に啓開しました。全てが流されて道路が分からないので、バックホウで削って舗装があれば道路だと判断しました。地盤沈下で道路が水に沈んでいたので、砕石を運んで、道路を嵩上げして繋げました。

 

―作業の上で気を付けたことは

 鵜住居では道路が狭く、電柱が沢山倒れていました。電柱や電線を避ける時に自分に跳ね返る危険がありましたので、注意するようにしました。

 大槌に入ると多くのご遺体が出てきました。傷をつけないように丁寧に作業を進めました。精神的に参ってしまうオペレーターがいて、交代させるようにしました。

 

―作業員の士気はどうでしたか

 仕事だという意識ではなく、「ウチらのような仕事をしている人間がやらなきゃならない」という思いを持っていたと思います。

 (株)テラ 常務取締役 小笠原秀夫さん

―いつまで作業が続きましたか

 大槌では9月まで、遠野支部全体の指示役として従事しました。最後は50人規模だったと思います。最初は道路啓開、後からは建物処理やガレキ集積の作業も行いました。


(株)テラ提供 (株)テラ提供

 

―燃料の確保は

 遠野市内のJAスタンドから、毎日タンクローリーで運んでもらうように手配しました。当初は釜石市内の業者にも供給しました。

 

―ガレキが片付いた時の思いは

 道路が片付いて、避難所などに車で行けるようになったのを見たとき、結果としてこちらに支援に来て良かったと思いました。釜石や大槌の業者は重機などが流されたので、隣の市の私たちが支援をするのは当たり前ですが、役所の人から「遠野支部のお蔭だった」と言われました。当初は停電で連絡も取れない中で、「やらなければ」という思いだけで動きました。

 

―その中で動いたという誇りはありますか

 それはありますよ。一番多い時は14社くらいで朝礼をしました。今でもその人たちと話ができます。



(おわり)


『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~
第38回(最終回) (株)山千(大槌町)代表取締役 山崎 真さん
第37回 (株)藤原組(大槌町)専務取締役 藤原 士さん
第36回 松村建設(株)(大槌町)土木部長 松村康文さん
第35回 (株)共立土木(陸前高田市)工事課長 鈴木正幸さん
第34回 (株)かねまつ建設(陸前高田市)取締役専務 菊池秀明さん
第33回 (株)長谷川建設(陸前高田市)営業部長 吉田昭彦さん
第32回 南建設(株)(軽米町)取締役社長室長 田中一也さん
第31回 (株)中舘建設(二戸市)土木部長 大鳥義博さん
第30回 成和建設(株)(花巻市)重機車両部執行役員部長 民部田正道さん
第29回 (株)小原建設(北上市)小田島愼さん
第28回 髙惣建設(株)(奥州市)高田営業所長 小野寺正晴さん
第27回 (株)山友建設(一関市)熊谷堅美さん
第26回 (株)山喜建設(一関市)三浦公夫さん
第25回 横田建設(株)(一関市)高田営業所長 新沼克則さん
第24回 鈴木工材(株)(一関市)菊地勝則さん
第23回 宇部建設(株)(一関市)工事副長 千田祐欣さん
第22回 (有)矢萩建設(一関市)重機主任 関村一男さん
第21回 吉田建設(株)(盛岡市)三浦一春さん
第20回 盛岡舗道(株)(盛岡市)機械係長 高橋直美さん
第19回 三陸土建(株)(盛岡市)伊藤成美さん
第18回 松田重機工業(株)(遠野市)重機部長 菊池隆悦さん
第17回 佐藤工業(株)(遠野市)飯森清幸さん
第16回 (株)テラ(遠野市)常務取締役 小笠原秀夫さん
第15回 (株)晴山石材建設(野田村)上川寿隆さん
第14回 (株)晴山組(野田村)山田 勉さん
第13回 兼田建設(株)(久慈市)大尻明男さん
第12回 佐藤建設(株)(田野畑村)常務取締役 片座康行さん
第11回 富山建設(有)(山田町)代表取締役 富山由光さん
第10回 三好建設(株)(宮古市)土木部次長 小川 司さん
第9回 大崎建設(株)(田野畑村)橘 良友さん
第8回 工藤建設(株)(岩泉町)土木部技士 西倉淳也さん
第7回 刈屋建設(株)(宮古市)五十嵐 和朗さん
第6回 (株)小松組(大船渡市)代表取締役 小松 格さん
第5回 (株)青紀土木(釜石市)萬 寛さん
第4回 佐野建設(株)(釜石市)八重樫充さん
第3回 新光建設(株)(釜石市)工事課長 中村 明さん
第2回 (株)中澤組(大船渡市)機材主任 霜山 隆さん
第1回 (有)熊谷技工(大船渡市)専務取締役 熊谷芳男さん



『記録誌第3号「記憶を思いに 未来につなげる」~震災復興5年の記録 これからも地域とともに~』に収録しております。