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  • 第9回 刺されても恐れず憎まずスズメバチ〈その1〉

    2009年2月28日花林舎

    花林舎動物記
     平成20年6月から「花林舎動物記」という楽しい動物のお話を読み切りで掲載しています。この「花林舎動物記」とは、滝沢村にある(株)野田坂緑研究所発行(所長 野田坂伸也氏)の会員限定情報誌「花林舎ガーデニング便り」の中で最も人気がある連載記事です。今月は第9回「刺されても恐れず憎まずスズメバチ〈その1〉」です。

    第9回刺されても恐れず憎まずスズメバチ〈その1〉

    ハチに刺される
     
    スズメバチに初めて刺されたのは7~8年前のことでした。山道で大きな岩の下にきれいな花が咲いていたので「何だろう」と近寄ってかがみ込んだら、ちょうど頭のところにハチの巣があって、いきなりガーンと殴られたような衝撃を受けました。前にアシナガバチに刺されたときに同じような衝撃を受けたことがありましたので、ハチだということはすぐわかりました。一目散に逃げましたがあまりにも巣の近くにいましたので、頭を3カ所も刺されてしまいました。一緒にいた社員もやはり頭を3カ所刺されました。
     その痛さたるや我慢の限度ぎりぎりです。人目が無かったら泣き出したかもしれません。そのうち痛いだけでなく頭がガンガンして、意識も少しボーとしてきました。それまでにもスガリ(地蜂)などにも刺されたことがあって、蜂毒アレルギーは無いことはわかっていたのですが、この痛さは気が変になりそうです。
     とうとう我慢ができず、病院に行きました。注射をしてもらうとずい分楽になり、医学はこういうことにも役に立つんだ、と見直しました。スズメバチに刺されて死んだ人の記事が毎年新聞に出ますが、アレルギーが無くても10カ所刺されたら痛みと発熱で死んでしまうなあ、とこの時はしみじみと実感しました。
     ところがここ数年は毎年スズメバチに刺されて、少し慣れっこになりました。痛いことはやっぱり猛烈に痛いのですが、対応の仕方もわかってきました。
     まず急いで刺された患部に両側から爪を当てて、毒をできるだけ搾り出します。毒の吸出器というのがあるそうですので、それを買いたいのですが何処で売っているのでしょうか。毒を搾り出したら虫刺されなどに効く軟膏を塗るのですが、私はその代わりに伴創膏にEM・Xをしみ込ませて貼っておきます。さらに、何かあったときに服用することにしているゲルマニューム剤を少し多めに飲みます。
     これでだいたい病院で手当を受けた時と同じくらいの効果があります。昨年社員がお客様のお庭で管理作業をしていてアシナガバチに刺された時は医大に連れて行きましたが、混んでいて1時間以上も放っておかれた上、看護師の対応がまことに冷淡だったので、それ以後は病院に行かないことにしました。
     ハチに刺された痛みは1日くらいで消えるのですが、その後痒くて痒くて、これにも参ってしまいます。やっぱり刺されないのが一番です。といっても秋になるとあちこちに巣があって注意していてもやられることが多いのです。マムシも恐いですが、長靴を履いていればまず噛まれる恐れがないのに対し、ハチは何十倍も襲われる確率が高いのです。

    花林舎敷地内のハチの巣
     花林舎の敷地内には少なくとも4種類のハチが毎年営巣します。本を見るとスズメバチは1度棲みつくと毎年その近くに営巣する習性がある、とありますが、確かにそのようです。ただし、作った巣がどんなに立派でも秋の終わりには放棄し、翌年再利用することはありません。
     花林舎に営巣するスズメバチは図鑑で見るとキイロスズメバチのようです。比較的小型のスズメバチですが、巣はラグビーボールのような大きくて見事なものです。
     この他に、たまにとてつもなく大きなハチが飛んで来ることがあります。体長が4~5センチあって、いつも1匹だけでゆっくり飛んでいます。こんなのに刺されたらたまらないなあと、恐ろしさで立ちすくんでしまいます。
     スズメバチの巣といえば美しい縞模様のある大きなボール状のものが代表的ですが、小屋の羽目板の節穴から盛んに出入りしていたこともありますし、土留めの丸太の間に巣を作っていたこともあります。キイロスズメバチは色々なところに営巣する性質があるそうです。ラグビーボール状の巣が初めて私達の目に入ったのは3年前で、これは社宅の2階の軒下にぶら下がっていましたが、8メートルばかりの高さのところでしたから全く危険はありませんでした。冬になってハチがいなくなると、野鳥がつついて壊してしまいました。多分、蜂の仔が残っていたら食ってやろうと思ってやったのでしょう。
     次の年はそこから50メートルほど離れた薪小屋の屋根裏に作りました。これは気が付かないでいて庭木の剪定枝を投げ込んだため、あっという間に頭と顔を刺されました。蜂毒が薄くなった頭髪をよみがえらせる効果があるなら、1回くらいは刺されてもいいのですが、痛いだけで何の効き目もありませんから刺され損でした。顔も腫れてフランケンシュタインのような容貌になり、2日くらい人に会わないで過ごしました。

    女王蜂が一人で作った巣

    女王蜂が一人で作った巣



    休憩室に作られたスズメバチの巣
     昨年(2005年)は、スズメバチの巣がなんと休憩室―10時と3時の休みにお茶を飲んだり、昼食を食べる場所にしているところの天井に作られました。
     最初に気づいたのは私の妻で「休憩室の天井に蜂が巣を作っているよ」と言うので見に行くと、手を伸ばしてちょっと跳び上がると触れるくらいのところに、まだ直径10センチも無い丸いきれいな形の巣ができていました。
     私と男性社員2人は庭園工事で朝から夕方まで外に出ていますので休憩室を使うことは少なく、会社に残って仕事をしている妻とパートの女性が使うことが多いのです。そのため、妻が発見者になったというわけです。
     こんな近くで、しかもお茶を飲みながらスズメバチの巣づくりを見られる機会はめったにありませんから、まことに幸運です。ハチが出入りしやすいように巣のそばの羽目板を1枚取り外してやり、このまま見守ることにしました。
     本を見ると、最初の巣づくりは女王蜂が一人でやる、と書いてあるのですが、確かにその通りで、発見したのは6月2日でしたが、この時には10センチ弱の巣ができていたのですから、活動開始は5月上旬あたりだったのでしょう。6月末近くまでは出入りするハチは女王蜂と思われる1匹だけでした。もっとも20日ころには女王蜂は中に引きこもってほとんど出てこなくなり、巣の入り口も小さくなりました。
     7月2日に数匹のハチが活動しているのを見かけました。どうやら6月末ころ働きバチが産まれたようです。この最初の働きバチは通常のハチより小型でした。
     7月末になると巣が2倍くらいの大きさになり、スズメバチの巣らしい縞模様もできてきました。
     8月10日ころには急速に巣が大きくなり、常に巣の表面を忙しげに歩き回っているハチが10匹以上いて、その他に休みなく飛び立ったり帰ってきたりするハチがいます。帰ってきて巣の中に飛び込んでいくハチは餌を持ってきて幼虫に与え、また飛び出していくのでしょう。
     巣の表面をせわしなく動いているハチは巣を作っているのでしょうが、それを眺めているとまことに不思議でたまらなくなります。
     ハチたちは職業訓練を受けたわけでもなく、また監督者がいるようにも見えないのにどうしてこんなに巧みに巣づくりができるのでしょう。巣を作るというのは相当難しい作業のように見えます。全体に目配りする監督蜂がいなければあちこち飛び出したり、イビツになったりした巣になってもおかしくないのに、美しい球型の巣ができていくのです。しかもどう見てもハチ達は勝手気ままに動き回っているようにしか見えません。第一、外へ出て餌を取ってくる係、入口にいて外敵に備える係、巣づくりをする係、などというのは誰が決めるのでしょうか。考えれば考えるほど不思議です。
     これをとことんつきとめようと努力する人は自然科学者になり、私のように思考停止型の人間は「やっぱり神様がいるんだろうなあ」と思ってしまうわけです。
    (次号に続く)

    完成した巣。ほとんどハチは死んでしまった。

    完成した巣。ほとんどハチは死んでしまった。



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