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  • 花林舎動物記 第7回ウメ太郎は何処に〈その1〉

    2008年12月30日花林舎

    花林舎動物記
     6月から「花林舎動物記」という楽しい動物のお話を読み切りで掲載しています。この「花林舎動物記」とは、滝沢村にある(株)野田坂緑研究所発行(所長 野田坂伸也氏)の会員限定情報誌「花林舎ガーデニング便り」の中で最も人気がある連載記事です。今月は第7回「ウメ太郎は何処に〈その1〉」です。

    第7回ウメ太郎は何処に〈その1〉

    犬を飼う
     
    ある作家が愛犬について書いたエッセーを読んだことがあります。家の中で飼っている犬の話で、筆者にとっては可愛いでしょうが、取り立てて変わったエピソードも無く、空虚な内容を文章のうまさでカバーしただけのつまらないエッセーでした。これを読んだ時、我が家の犬達のことを書けば100倍もおもしろいエッセーになるのだが、と思いました。
     我が家では山の中の現在地に移るとき、番犬が欲しくなり保健所の野犬収容所に行ってオスの仔犬を1匹もらってきました。大きくなる犬を希望したのですが、貰ってきた犬は成長しても柴犬くらいにしかなりませんでした。そして不思議なことに、私が子どもの頃に飼っていた犬にそっくりでした。
     1匹で済ませる予定だったのですが、知り合いから仔犬が生まれたから貰ってくれないか、と頼まれてメスの仔犬を1匹引き取り、都合2匹になりました。
     娘たちがオスには「梅太郎」、メスには「椿」と命名しました。ツバキはすぐに大きくなり、ウメ太郎の1.5倍くらいの大きさになりました。ウメ太郎はツバキと一緒に居たがりましたが、ツバキはウメ太郎を好きではないのか、ウーッと唸って近寄せないことが多かったのです。身体の大きいツバキの方が圧倒的に強かったのでウメ太郎は悲しそうな表情をして引き下がるしかありませんでした。
     ウメ太郎は本当に表情の豊かな犬で、喜怒哀楽が良くわかりました。私が出張から帰ってきた時など、嬉しくてたまらないという顔で踊るようなしぐさで走ってやってくるのです。また、ウメ太郎の犬語は私には時々わかりました。そういう吠え方をする利口な犬でした。

    ウメ太郎とツバキ 
    ウメ太郎(左)とツバキ。

    仔犬の誕生
     
    現在地に引っ越してきた翌年の12月に突然ツバキが消えてしまいました。呼んでも答えず、全く姿を見ることもなく3日経って諦めかけた時、思いもかけない所で見つかりました。
     薪にするためにカラマツの丸太を2メートルの長さに切って、家の前に大量に積んでいたのですが、ツバキはその下に穴を掘って潜み、仔を産んでいたのです。野生動物と同じ行為に驚きました。
     腹ばいになって覗いて見ると暗がりの中にネズミほどの大きさの仔犬達がかすかに見えますが、ツバキが唸って威嚇しますので、手を入れることはできません。
     ツバキは飲まず食わずで出産し、仔を守っていたようなので、入口に水と食べ物を置いて静観する日が何日か続きました。数日すると仔犬達が時々入口まで出て来るようになり、3匹いることがわかりました。そして母犬が排便のために外に出た隙に仔犬を穴から取り出してみました。両手にすっぽり入るくらいの大きさで、クークーと鳴いている仔犬達の可愛さといったらありません。いつまでも小さいままでいてくれたら、と思いましたが、見る見る大きくなりそれから数年間、私の苦労が続きますが、これは省略。

    仔犬達
    仔犬達。左からスグリ、タンポポ、マンサク。

    雑種×雑種=千差万別

     ウメ太郎は茶と白のブチで、姿はとても可愛い犬でした。犬種はわかりませんが耳が立っていませんでしたから日本犬ではなかったと思います。毛が短く寒がりでした。ツバキは汚れた黒褐色で毛が長く、一目で雑種とわかる姿の、耐寒性の強い犬でした。この2匹の間に生まれた3匹の仔犬達は、とても兄弟だとは思われないほど違う外見をしていて、遺伝学者でなくても彼等(すべてオスでした)を見たら遺伝のおもしろさに興味をそそられずにはいないと思います。
     一番不思議なのはマンサクでした。この仔犬は小型で毛がふさふさしていてスピッツそっくりでした。両親のどちらにも似ていません。両親の形質が組み合わさってできたのではなく、何代か前の先祖の血がいきなり現れたのではないか、と推察しました。
     スグリは体形は精悍な狼型で、大きさと毛の長さは両親の中間で色は全身が薄茶色です。食欲旺盛で太っていて、散歩に行くのがおっくうな、ものぐさです。
     タンポポは体形はスグリと似ていますが、白と黒のブチです。気が弱く父親のウメ太郎が恐くてたまらず、いつもゴマをすっていました。しかし野生の能力は1番です。
     ウメ太郎はどれくらいの期間かわかりませんが野良犬でしたので、多分そのせいだろうと考えられる習癖がありました。それは食べ物を守る、ということです。ウメ太郎が餌を食べている時うっかり近づくと、唸り声を出して警告し、それに気づかず手を出したりするといきなりガブリと噛みつくのです。きっと野良犬の頃生命がけで食べ物を確保していた生活の名残だろうと推察しました。
    イタチを前にすごむウメ太郎 
    どこかで拾ってきたイタチを前において
    「ワシの獲物に手を出すな」
    とすごむウメ太郎。
     その反面、初めて会った人にも愛想よく尻尾を振って近寄っていくのでお客さまには人気があったのですが、いつ変身してガブリとやるかわかりませんので「手を出さないで下さい」と急いで叫ぶのが常でした。

    〈次号に続く〉


    第6回妄想的汚水浄化生態園(2)
    第5回 妄想的汚水浄化生態園(1)
    号外編 原種シクラメン・ヘデリフォリュームの紹介
    第4回 ボーフラとオタマジャクシの知られざる効用
    第3回 哀しきマムシ
    第2回 アオダイショウは可愛い
    第1回 ナメクジ退治