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  • 浜の歴史に感謝し、未来に海を紡ぐ ―岩手の漁業全体を盛り上げる「恋し浜ブランド」小石浜養殖組合 ホタテ部長 佐々木淳さん

    2016年2月01日岩手県建設業協会

     一般社団法人岩手県建設業協会では、これまで平成24年と平成25年に東日本大震災の記録誌を発刊致しました。本年3月に震災から5年を迎えますが、同月に3刊目の記録誌発刊を予定しております。記録誌では建設業の声だけではなく、地域の方の声を掲載します。復興に向けて頑張っている地域の姿や思いを各方面にお伝えすることを目指しています。

     発刊に向けて編集を進めている中から、地域の方の声を先行してブログで紹介致します。最後にインタビューの動画もご覧下さい。

     インタビュー記事の編集は日刊岩手建設工業新聞社です。


    浜の歴史に感謝し、未来に海を紡ぐ ―岩手の漁業全体を盛り上げる「恋し浜ブランド」
      綾里漁業協同組合 小石浜養殖組合 ホタテ部長 佐々木淳さん

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    「食べる側の人との関わりがいかに大切か。震災を通して改めて実感しましたね」

     「恋し浜」の名で全国に知られ、築地で最高値を付けたこともあるホタテを、東日本大震災は容赦なく奪い去った。大小合わせて50隻以上あった船も、残ったのは陸に打ち上げられた小舟を含む4隻のみ。明治と昭和の津波で被害を免れた家屋も流され、川沿いの作業場は10棟全てが流出した。

     「何年かかっても構わないから復活してほしい」。消費者や取引先から届く温かい声。ボランティアで現地を訪れていたオール・ハンズ・アジア代表理事の北濱哲さんが呼び掛けた寄附金によって、荷さばき施設も復旧した。「食べる側の人が私たちを心配し、元気づけたいという思いを感じることができました」。佐々木さんは振り返る。

     震災後、漁協の素早い対応もあり、11年12月に養殖施設の約7割が回復した。北海道から半成貝を調達して養殖を再開し、12年から出荷をスタート。14年以降は稚貝から育てた2年貝の出荷を再開。一人当たりの出荷量は震災前の水準にまで復活した。

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     15年からは、生産者と消費者とつなぐ新しい動きも始まった。海中がれき撤去のボランティアを行っていたダイバーの佐藤寛志さんが中心となり、三陸鉄道恋し浜駅前に「恋し浜ホタテデッキ」を8月オープン。この土地を訪れた人たちとの交流スペースとして、小石浜の土地や漁業のファンを増やし、新たな需要創出にも結びついている。

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     また、9月には「綾里漁協食べる通信」が創刊。創刊のきっかけは、「東北食べる通信」で紹介された恋し浜ホタテ。漁協職員が編集長を務め、綾里地区にある6漁港の生産者らにスポットを当て、漁業の魅力を発信しながら、食べる側と直接つながるツールとして年4回の発行を目指している。佐々木さんも「綾里がモデルケースとなり、各地の浜で交流人口が増え、活気づくきっかけになれば」と期待を込める。

     「自分たちだけが良ければという考えでは続きません」。佐々木さんは常に岩手全体のブランド化、活性化を視界に入れる。「恋し浜ホタテがブランド化すれば、恋し浜のある岩手が付加価値になり、岩手には美味しいものがまだまだ沢山あることを知ってもらえます。だから私たちは、狭い世界の中での足の引っ張り合いはしない。他人を蹴落とすのではなく、お互いが高みを目指し岩手全体が盛り上がってこそ、初めて自分たちに返ってくると思っています」

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     恋し浜ブランドの基盤をつくったのは、先代の漁業者たち。漁場の能力を把握した上で数量制限に取り組み、量ではなく質を追求したことが、現在の姿に結実している。

     佐々木さんは、この連綿と続いてきた浜の歴史に感謝しながら、次世代につないでいくことの責任を訴える。「食材のファンになってくれた人が、その土地のファン、漁業のファンになってくれる。そこから交流が生まれ、漁業を志す人や将来的に移住してくれる人が出てくるなど、新しい化学変化が起きる可能性だってある。それが海を未来へと紡いでいくことになると思います」

    おわり


    インタビューの動画です。

    小石浜養殖組合ホタテ部長 佐々木 淳氏インタビュー(2016.1.7小石浜漁港にて)
    聞き手 日刊岩手建設工業新聞社
    撮影・編集 一般社団法人岩手県建設業協会