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花林舎動物記 第1回 ナメクジ退治 (「花林舎ガーデニング便り」より)

「花林舎動物記」の掲載について
 今月から数回にわたり「花林舎動物記」という楽しい動物の話を読み切りで掲載いたします。
 この「花林舎動物記」とは、滝沢村にある(株)野田坂緑研究所発行の会員限定情報誌「花林舎ガーデニング便り」の中で最も人気がある連載記事です。
 このほど、執筆者である(株)野田坂研究所所長の野田坂伸也さんに深いご理解を頂き、ご厚意で転載を了承して頂きました。
 とても面白い内容となっておりますので、是非お読みください。


中庭への侵入者
 花林舎主人の自宅の中央は、屋根から地面までぶっ通しの空間があり、中庭になっています。庭造りを仕事にしているため、中庭というのをどうしても作ってみたかったのです。中庭の屋根は透明なアクリル板なので光が入りますが、あまりにも縦長すぎるため、底まで充分な光量が届かず、希望に反してよほど耐陰性の強い植物しか育たない中庭になってしまいました。
 もっとも、建物内部に光をとり入れるという役割は充分果たしていますから、まるっきり無駄になったわけではありません。広さは2.5メートル×2.5メートルです(図参照)。
kari080626-1.jpg この家に住み2年くらいたったころ、中庭に植えた植物が光量不足で生育不良になるばかりでなく、どうも虫に喰われているようだと気が付きました。
 四方から囲われたこんなところに、どこから虫が入ってきたのだろう、何の虫だろうと思って葉の裏表を調べてみたのですが、1匹の虫も見つかりません。昼は隠れていて夜に出てくる夜盗虫かもしれない、とも考えたのですが、被害の状況が合いません。そのうち地面の上に銀色の筋がついているのに気付いて、ナメクジかな、と思い当たりました。ナメクジも夜行性の動物です。
 早速、その日の夜10時頃だったでしょうか。パッと壁面の電灯をつけて地面を見たとたん、「ウギャー!」と思わず叫びそうになりました。
 どうしてそれまで気がつかなかったのでしょう。何を食べてこんなに増えたのでしょう。中庭の土の上には足の踏み場もないどころか、片足で確実に10匹は踏みつぶせるほどのナメクジの大群がうごめいていたのです。
 いやはや、その気味の悪いこと。中国の暴君が意に従わない女性を投げ込んだという拷問室のようです。しばし呆然としてしまいましたが、敵の正体が分かりましたから対策も立てられる、ということになります。

無敵の宇宙人?
 翌日、農薬の店に行ってナメクジ退治の薬を求めると、”ナメクジコロリ”だったか”ナメダウン”だったか忘れましたが、いかにもたちまちナメクジが全滅しそうな名の薬を売ってくれました。これをまいておくと夜の間にナメクジが食べて死んでしまうのだそうです。
 この薬をナメクジにたらふく御馳走しようと、片足の下に10粒は転がっているくらいたくさんまきました。
 翌朝見ると、確かにかなりの数のナメクジが死んでいました。しかし、あのおびただしい数に比べるとどうも少ない。ナメクジも休日で、土の中で寝ていて出てこなかったのがいるのかもしれません。
 その夜、またパッと電灯をつけてみました。すると、いるわ、いるわ、かなり死んだと思ったのがウソのように、まだたくさんのナメクジがうごめいています。気味悪いのを我慢して、その夜動いているナメクジを観察すると、毒エサはまだ無数にあるのに、どのナメクジも食べようとしません。
 試しに、1匹の大きいナメクジの回りを毒エサですっかり取り囲んでみました。どっちに移動するにしろ毒エサにぶつかりますから、食べざるを得ない・・・でしょう。
 ところがこのナメクジは、毒エサの輪にぶつかると、まったく食べずに、それを乗り越えて外へ出てしまったのです。こんなものは絶対に食べないぞ、と言っているのです。この時ハッと、昔読んだ少年科学読物の記事を思い出しました。「ナメクジは宇宙人が化けているのだ」という説です。私の脊髄に入り込んで私を支配してしまおうと考えているのではないでしょうか。あぁ、恐ろしい。
 まあ、宇宙人ナメクジではなかったとしても、どうして半分のナメクジは食べて死に、残りのナメクジは絶対に食べないのでしょう。私達には聞こえない声で「ウーン、やられた。これは毒だから食べるな」と叫んで死んでいったのでしょうか。
 それとも単に好き嫌いだけのことで、「嫌いだから食べないよ」と言っているだけなのでしょうか。そうだとすると、食べ物の好き嫌いは生命に関わる大問題ということになります。世の親達は子供に「ニンジンも食べなきゃだめ」と無理やり食べさせますが、これは正しいことなのでしょうか。ナメクジ達は嫌いなものは食べない、という行動によって生き延びたのですから。
 こうして第1回ナメクジ退治は失敗してしまいました。毒エサは次第にカビが生えて消えてしまいました。

必殺・南京豆殻作戦
 次に取った手段は、もっと直接的で暴力的なものでした。塩をかけたり、木酢液をかけたり、熱湯をかけたりしたのです。これは確実に死ぬのですが、ナメクジがのたうちまわり死んでいく姿を見続けていると、自分がとんでもなく酷薄非道な人間のように思えてだんだん嫌になり、全滅させられないうちにやめてしまいました。しかし、ナメクジ退治をあきらめたわけではありません。
 ナメクジは、じめじめ湿ったところを好むようです。それなら、乾燥し、ナメクジが移動するにつれて、体が乾いてきてどうも住みにくくて困る、というような環境にしてやればいいのではないか、と思いつきました。
 そこで、殻付きの南京豆を買ってきて、せっせと豆を食べては殻を中庭にまき散らしました。冬の間豆を食べ続けましたので、春には中庭の地表がすっかり南京豆の殻で埋めつくされました。
 雨が当たらないので殻は乾燥したままですし、凹凸がある上にグラグラ動くのでナメクジはいかにも歩きにくそうです。
 結論から申し上げますと、この作戦は見事に成功しました。1年くらい豆殻を絶やさないようにしていたら、いつの間にかナメクジは消滅していました。もっとも、エサになるような植物ももう植えませんでしたから、餓えて死んだのかもしれません。それでも1年か2年はたまに銀色の歩行跡を見かけましたが、今はまったく見ることがありませんし、夜遅く電灯をつけてみてもナメクジの姿は見当たらないのです。



 イギリスの庭の本を読んでいると、イギリスにはハリネズミという動物がいて、これがナメクジを食べてくれるので、ガーデニング愛好者はハリネズミを大切に守っているという話が出てきます。
 私の家の中庭にも、実はネズミが出没するのです。小さい可愛い野ネズミと、大きくて憎たらしい家ネズミがいて、どっちかが現れます。
 ハリネズミがナメクジを食うなら、野ネズミや家ネズミもナメクジを食うかもしれません。南京豆の殻で絶滅させたと思っていたのは間違いで、実はネズミの力でいなくなった可能性も否定できません。ただし、食べつくして絶滅させるというのは、なかなか難しいのではないでしょうか。例えば、川の魚を釣りや投網で取り続けてもなかなか絶滅しませんが、河川改修をして魚の棲めない川にしてしまうと、あっけなく全滅します。
 わが家の中庭のナメクジも、やっぱり南京豆の殻によって絶滅したのだと思います。


「花林舎ガーデニング便り」より 花林舎動物記 第1回 ナメクジ退治
 花林舎(かりんしゃ)ガーデニング便り
  発 行 (株)野田坂緑研究所(岩手県滝沢村篠木)
  発行人 野田坂伸也

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このページは、管理者が2008年6月26日 13:29に書いたブログ記事です。

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