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  • 第10回刺されても恐れず憎まずスズメバチ〈その2〉

    2009年3月28日花林舎

    花林舎動物記
     平成20年6月から「花林舎動物記」という楽しい動物のお話を読み切りで掲載しています。この「花林舎動物記」とは、滝沢村にある(株)野田坂緑研究所発行(所長 野田坂伸也氏)の会員限定情報誌「花林舎ガーデニング便り」の中で最も人気がある連載記事です。今月は第10回「刺されても恐れず憎まずスズメバチ〈その2〉」です。

    第10回刺されても恐れず憎まずスズメバチ〈その2〉

    ついにやられちゃった
     8月になると巣は急速に大きくなり、ハチの数も見えるだけで数十匹に増えましたが、私達は慣れっこになって平気でその下を通って休憩室に出入りし、お茶を飲んだりしていました。もっとも前に書きましたように、休憩室の主な利用者は妻とパートの女性1人でした。
     スズメバチは夏の終わり頃から凶暴性が増す、といわれているのですが、私達の友好関係も8月下旬に突如終止符を打つことになりました。
     8月25日。この日は全員で社内の花苗の手入をしていました。私は自宅で書類を作成していました。
     3時半ごろ妻が家に飛び込んできて「スズメバチに刺されちゃった」と言うのです。そして軟膏を探して刺されたところに塗り付けました。
     休み時間になって5人の作業者がドヤドヤと休憩室に入ったのがハチを刺激したのではないか、というのが妻の考えでした。皆が椅子に座ったところをハチが襲い、妻とパートの女性が刺されたそうです。若い男性2人と女性1人は運良く襲われなかったので、急いで室を飛び出し助かったそうです。
     私は若い3人に「年寄りを助けないで若い者が真っ先に逃げるとは何事だ」と叱るつもりで現場の方に行ってみますと、若者達は巣から10メートル以上離れた所に寄り添って立ち、青い顔をして震えていましたので、叱るのはやめました。

     完成した巣を下から見上げたところ
     完成した巣を下から見上げたところ




     それからハチの状態を見ようと思い、3メートルほどの所に立って眺めていると、5秒もしないうちに2匹のハチが真っ直ぐ私の方に飛んで来て、「しまった」と思う間もなく額を2ヵ所刺されてしまいました。例によって、ガーンと殴られたようなすごい痛みです。あわてて手で払いのけましたが、ハチはしっかりとしがみ付いてなかなか取れません。さらに別のハチがやってくるのが見えましたので、急いで巣から遠ざかりながら、ようやく2匹のハチを払い落としました。
     すぐ家に帰り鏡に顔を映してみますと、小さくポツンと赤く脹れたところが2ヵ所と傷跡が1ヵ所あります。刺されたのは2ヵ所のはずなのに、傷跡らしいところは3ヵ所とはどういうことだろうという疑問が浮かびましたが、とりあえずその3ヵ所に爪を当てて毒を搾り出し、EM・Xをしみ込ませたカット絆を貼り、有機ゲルマニューム剤を3錠飲みました。
     後で林業労働者から聞いたのですが、スズメバチはまず噛み付いて落ちないようにしておいて刺すのだそうです。そうすると傷跡は噛まれた場所だったということになり、疑問は氷解しました。
     2人が刺された後に見に行き、私も刺されたというのは阿呆みたいな話なので黙っているつもりでしたが、だんだん顔が腫れてきたのでばれてしまいました。
     しかし、この日の夜遅くには腫れも引き、翌日はほぼ平常に戻りました。妻はしばらく腫れやかゆみが残ったようです。
     パートの人には、この日は帰って医者に診てもらうようにと話しました。幸い彼女も重症になりませんでした。
     こんなことがあるとさすがにもう休憩室は使えませんので、翌日の夜、ハチ達が眠っている間にテーブルと椅子を外へ運び出し、30メートルほど離れた木の下に移して青空休憩室にしました。
     近づかなければ危ないことはありませんので巣はそのままにしておきました。

    ハチも手抜き工事をする
     9月5日ころ、ハチ達にとって大変なことが起こりました。こんなことがあるのか、とびっくりしましたが、人間だけが失敗するのではない、神が統治している(?)自然界でもこんな失敗があるのだと知って愉快になりました。
     妻が「ハチの巣の中身が落ちてしまったよ」と言うのです。「エッ、どういうこと?」と始めは理解できなかったのですが、このころには直径25センチ近くになっていたスズメバチの巣の中身が何故か抜け落ちてしまい、巣の真下にあるということのようです。
     翌日行って、離れたところから眺めてみると確かに巣の中身が地上に落ちています。それは厚さ10センチ、直径20センチくらいの円盤型をしていて、巣房が3段重ねになっていました。太った白い幼虫がびっしり詰まっていて、いかにも重そうです。下になった層の幼虫は潰れて死んでしまったのでしょうが、上層の巣房の幼虫はまだ生きている可能性があって、働きバチが数匹どうしようかとうろうろ歩き回っています。
     私が見た時は落下後3~4日経っていたと推定されますので、死んだ幼虫はもう腐り出しているのではないかと思いそのままにしておいたのですが、新鮮な蜂の仔なら油でいためて食べたでしょう。もったいないことをしました。
     このころハチの巣は釣鐘型をしていたので、ドンドン数が増えて重量を増す幼虫の重さに、側壁の支えが耐え切れなくなって下部が抜け落ちてしまった、と考えられます。巣の大きさから見ると、落ちたのは3分の1くらいのようでしたが、ハチ達にとっては相当なショックだったに違いありません。

     抜け落ちた巣の中身
     抜け落ちた巣の中身


     これは設計ミスなのか手抜き工事があったのか、詳しく調査しないとわかりませんが、ハチ達は私がこの事故を知った翌日あたりにはもう気を取り直して猛然と働き始めていました。この事故がかえって、ハチ達の結束力を強めたようでした。

    アシナガバチが襲われる
     巣の修復も順調に進み、ハチ達も落ち着いたろうと油断したのがまずく、9月18日にまた刺されました。巣から3メートルほどのところに水道の蛇口があり、そこでジョウロに水を汲んでいたら、いきなり頭にガーンという衝撃を受けてびっくり。このときは不意打ちでしたのであわててしまいなかなかハチを払い落とせず、たっぷりと毒液を注入されてしまいました。
     しかし、この日もEM・Xと有機ゲルマニューム剤が効いたのか、夜遅くにはすっかり楽になり、翌日には腫れも引きました。刺されたことは恥ずかしいので黙っていたのですが、妻には「少し顔がふくれてるけど」とばれてしまいました。
     これより1週間ばかり前、家の台所の前の軒下にあったアシナガバチの巣が破れてボロボロになっているのを、これも妻が発見しました。「きっとスズメバチに襲われたんだよ」と言います。恐怖にかられたアシナガバチが10匹ほど、窓を開けていた妻の部屋に逃げ込んできて出て行かないので、ほうきでようやく追い出したそうです。
     別のグループが十数匹玄関に逃げ込んできてボール状の電灯の傘にしがみ付いたまま、数日経ってもそのままです。水も飲まず、もちろん餌をとる気配もなくほとんど動きません。それにしても吸盤も無い足で、こんなツルツルのガラスにぶら下がっておられるのも不思議です。

     スズメバチに巣を襲われたアシナガバチ
    スズメバチに巣を襲われたアシナガバチは
    我が家の玄関に逃げ込んで、
    数日間も電灯の笠にしがみついていた。


     玄関の戸を開け放しておいてもハチ達は出て行こうとしないので、「そんなに引きこもっていては駄目になるよ」と言ってホウキで追い出してやりました。スズメバチ恐怖症から立ち直ることができたかどうか心配です。
     後の話になりますが、10月31日に車庫を半分解体し、屋根のトタンの波板を剥がしていたら、その下からアシナガバチと思われるハチが数十匹出てきました。越冬状態に入っていたのでしょう。ホウキで払い落していたのですが途中でかわいそうになり15匹ばかり拾い集めて、板を2枚合わせた間の隙間に入れて、別の小屋の隅においてやりました。
     このとき私の首の後に入り込んだハチがいて、首を動かした弾みにチクッと刺したのですが、もう毒も枯れ果てていたらしく、これは蚊に刺されたほどの痛みも無く、1分もしたらかすかなその痛みも跡形も無く消えてしまいました。秋の哀れを感じました。
    (次号に続く)

    第9回刺されても恐れず憎まずスズメバチ〈その1〉
    第8回ウメ太郎は何処に〈その2〉
    第7回ウメ太郎は何処に〈その1〉
    第6回妄想的汚水浄化生態園(2)
    第5回 妄想的汚水浄化生態園(1)
    号外編 原種シクラメン・ヘデリフォリュームの紹介
    第4回 ボーフラとオタマジャクシの知られざる効用
    第3回 哀しきマムシ
    第2回 アオダイショウは可愛い
    第1回 ナメクジ退治