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  • 「農業の再生を通じて 産業と雇用の安定を ―真の地方創生に向かって」農事組合法人サンファーム小友 代表理事組合長 石川滿雄さん

    2016年2月17日岩手県建設業協会

     一般社団法人岩手県建設業協会では、これまで平成24年と平成25年に東日本大震災の記録誌を発刊致しました。本年3月に震災から5年を迎えますが、同月に3刊目の記録誌発刊を予定しております。記録誌では建設業の声だけではなく、地域の方の声を掲載します。復興に向けて頑張っている地域の姿や思いを各方面にお伝えすることを目指しています。

     発刊に向けて編集を進めている中から、地域の方の声を先行してブログで紹介致します。インタビュー記事の編集は日刊岩手建設工業新聞社です。


    農業の再生を通じて 産業と雇用の安定を ―真の地方創生に向かって
      農事組合法人サンファーム小友 代表理事組合長 石川滿雄さん


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     農林水産業が基幹産業である陸前高田市。その中で100㌶近い農地が被災した小友地区での営農再開は2014年。地元ブランド米「たかたのゆめ」をはじめ、市の平均的な反収を上回る理想的なスタートとみられた。しかし農地改革の影響による減反補助金の減額、戦後最悪とも言われた米価の下落、農業資材や燃料費の高止まりなどの逆風が吹いた。農地の復旧を第一に進んできた石川さんたちは、15年からが本当の勝負と気持ちを新たにした。

     小友地区の高台からは東に大野湾、西に広田湾を一望する。2011年3月11日、この二つの湾がそのまま両方向からの津波の入口となった。被害を受けたのは農地だけではない。農業用の資機材、倉庫、自宅、その全てを失った農業者もいた。

     11年11月に県から出されたプランは、受益者負担ゼロの原形復旧と負担が生じる区画整理事業の2案。「まずは暮らしの再建。とても営農どころではない」「わずかでも負担が生じるならば原形復旧でも」などの声が強くなっていった。

     石川さんは当時、水利組合の組合長を務めていた。「米価が低迷し減反政策が強化される中、遊休農地や耕作放棄地も増えている。将来に向けた農地の面積拡大が必要」との思いから、戸羽太市長に対して区画整理事業における受益者負担の免除を要望。市議会での審議を経て、市による負担が決定した。

     旧来の5~10㌃の区画を30~50㌃に拡大する区画整理事業の導入が実現した。その一方、地元農家は高齢化が進み、資機材も被害を受けていた。石川さんらは地元農家と何度も意見交換を重ね、新組織による農業経営が決定。水利組合、稲作組合、転作組合、機械利用組合の4組合を合併し、14年3月「農事組合法人サンファーム小友」が誕生。その年、約90㌶の農地に一面の緑が戻った。

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     営農再開から2年目となる15年、「たかたのゆめ」は特栽米であり収量が上がらないことから耕作面積を縮小するとともに、個別の販売ルートを開拓して米価下落に対応。耕作面積を15㌶に拡大した飼料米では生産コスト削減に向けた直まき栽培も始めたが、農地の均平状態が安定するまでにはもう少し時間を要するという。

     しかし石川さんたちは、現状にただ手をこまねいているわけではない。新たに大豆とニンニクの栽培をスタートした。特にもニンニクは健康食品向けに、安全・安心な国内産へのニーズが高まっており、安定的な収入の確保につながることが期待されている。

    ニンニク収穫
     「私たちの営農はマイナスからのスタート。確かに現在、経営状況は楽ではありません。しかし地方の本当の再生、真の地方創生のためには、安定的な雇用の場が不可欠」。石川さんは、小友地区の農業の再生にとどまらず、陸前高田市全体の将来を見据える。「私たちが安定的な経営を実現することで農業が再生し、地域の産業と雇用の安定化にもつながっていくはず。地域の将来のため、今をがんばらないと」と力を込める。

    おわり