東日本大震災における道路啓開等作業従事者証言集

 東日本大震災における被災現場の最前線で、地元建設業者は人命救助活動や道路啓開作業、応急・復旧作業などにあたりました。その活動は、震災当日から翌日にかけて始まっていました。

 地元を熟知して、重機類を保有する地元建設業者は当初、緊急車両などの通行を確保する為の道路啓開作業(1車線だけでも通行できるようにする)が主な活動でした。行政や地元住民との信頼関係を築いていたことが迅速な活動につながりました。

 『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~では、最前線で作業にあたった方々の「生の声」をお伝えします。建設業者が果たした役割について再確認するとともに、震災の実情を風化させないことを目的としております。

(第16回より、内陸からの後方支援を掲載しています)

 第19回は三陸土建(株)(盛岡市) 伊藤成美さんです。

三陸土建(株) 伊藤成美さん(58歳:震災当時)
《職種》重機オペレーター
《啓開作業時の作業内容》重機オペレーター

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「被災地に行って、自分がやってきた仕事で満足はないと思います、誰でも」

―宮古へ行く指示を受けたのはいつでしたか

 4月4日、社長から指示を受けた部長が現場に来ました。部長から「明日から行けるか」と聞かれました。「行けるか」ということは、「行ってくれ」と同じだと受け止め、承諾しました。

 翌日の朝5時ごろ、ダンプの運転手とダブルピックに仮設トレイを1基積んで宮古に向かいました。部長は別の車で向かい、当社からは3人です。宮古に着いて、他の業者や自衛隊、警察の人たちと一緒に作業の説明を受けました。場所は、魚市場北側の鍬ヶ崎の入り口付近だったと思います。

 

―部長から指示を受けた時の思いは

 震災当日から、自宅の発電機を動かして、テレビで状況を見ていました。内陸の業者に要請があれば、いつかは動くことになると思っていました。指示を受けた時の動揺はなく、「行かなきゃならない」という思いがありました。

 

―実際に現地を見て感じたことはありますか

 映像で見ていた感じと、実際の現実とはかけ離れていました。20m程あるタワークレーンの階段が中段までなぎ倒され、魚市場のドーム型屋根に軽四輪が刺さっていました。想像していた津波の高さよりも、はるかに高かったです。かなり太い街灯が全て同じ方向に倒れ、電柱も根元から折れていました。想像できない程の波の力です。

 

―どの様な作業を行いましたか

 当初は、両側に寄せられたガレキで、大きな車両の通行が困難な道路を広げる作業です。電柱や電線、トランス、漁具等がありました。自衛隊員が4人ほどで電線やロープを切断して行きます。私はグラップル付きバックホウでダンプにガレキを積み込みました。8日には山根の方で民宿と思われる建物、その後、光岸地でアパートや蔵を片付けたのを覚えています。

三陸土建 提供

―危険なことはありませんでしたか

 普通の建物解体は順番に壊すので問題がないのですが、建物が組んだままでは引っ張ってもなかなか出て来ませんでした。周りに自衛隊員がいるので、2次災害防止に気を配りました。

 

―盛岡から宮古まで通ったのですか

 最初のうちは通いました。途中から岩泉のホテル、最後の3日位は宮古市内のホテルに泊まりました。泊まっている時は悶々として、よく眠れた感じはしませんね。緊張感を引きずって、24時間、仕事の延長といった感じだったのかもしれません。

 

―つらいことはありましたか

 津波に流されたお婆さんを探している、30代位の姉妹が、毛布を被って私の作業を見ていることがありました。夕方、「明日も来てもらえますか」と聞かれましたが、ちょうど交代の日で要望に応えられませんでした。出来れば続けてあげたかったです。

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―作業はいつまで続きましたか

 4月15日、「今日で終わり」と突然言われました。どこかの地区が全部終わったという訳でもなく、急に終わったので、中途半端な気持ちでした。

 

―作業を振り返っての思いは

 被災地に行って、自分がやってきた仕事で満足はないと思います、誰でも。犠牲者が全員見つかった訳でもなく、何も終わってないですから。その気持ちは何年経っても変わらないと思います。

 



(おわり)


『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~
第38回(最終回) (株)山千(大槌町)代表取締役 山崎 真さん
第37回 (株)藤原組(大槌町)専務取締役 藤原 士さん
第36回 松村建設(株)(大槌町)土木部長 松村康文さん
第35回 (株)共立土木(陸前高田市)工事課長 鈴木正幸さん
第34回 (株)かねまつ建設(陸前高田市)取締役専務 菊池秀明さん
第33回 (株)長谷川建設(陸前高田市)営業部長 吉田昭彦さん
第32回 南建設(株)(軽米町)取締役社長室長 田中一也さん
第31回 (株)中舘建設(二戸市)土木部長 大鳥義博さん
第30回 成和建設(株)(花巻市)重機車両部執行役員部長 民部田正道さん
第29回 (株)小原建設(北上市)小田島愼さん
第28回 髙惣建設(株)(奥州市)高田営業所長 小野寺正晴さん
第27回 (株)山友建設(一関市)熊谷堅美さん
第26回 (株)山喜建設(一関市)三浦公夫さん
第25回 横田建設(株)(一関市)高田営業所長 新沼克則さん
第24回 鈴木工材(株)(一関市)菊地勝則さん
第23回 宇部建設(株)(一関市)工事副長 千田祐欣さん
第22回 (有)矢萩建設(一関市)重機主任 関村一男さん
第21回 吉田建設(株)(盛岡市)三浦一春さん
第20回 盛岡舗道(株)(盛岡市)機械係長 高橋直美さん
第19回 三陸土建(株)(盛岡市)伊藤成美さん
第18回 松田重機工業(株)(遠野市)重機部長 菊池隆悦さん
第17回 佐藤工業(株)(遠野市)飯森清幸さん
第16回 (株)テラ(遠野市)常務取締役 小笠原秀夫さん
第15回 (株)晴山石材建設(野田村)上川寿隆さん
第14回 (株)晴山組(野田村)山田 勉さん
第13回 兼田建設(株)(久慈市)大尻明男さん
第12回 佐藤建設(株)(田野畑村)常務取締役 片座康行さん
第11回 富山建設(有)(山田町)代表取締役 富山由光さん
第10回 三好建設(株)(宮古市)土木部次長 小川 司さん
第9回 大崎建設(株)(田野畑村)橘 良友さん
第8回 工藤建設(株)(岩泉町)土木部技士 西倉淳也さん
第7回 刈屋建設(株)(宮古市)五十嵐 和朗さん
第6回 (株)小松組(大船渡市)代表取締役 小松 格さん
第5回 (株)青紀土木(釜石市)萬 寛さん
第4回 佐野建設(株)(釜石市)八重樫充さん
第3回 新光建設(株)(釜石市)工事課長 中村 明さん
第2回 (株)中澤組(大船渡市)機材主任 霜山 隆さん
第1回 (有)熊谷技工(大船渡市)専務取締役 熊谷芳男さん



『記録誌第3号「記憶を思いに 未来につなげる」~震災復興5年の記録 これからも地域とともに~』に収録しております。