いわけんブログ
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~(第35回)
2015年2月02日岩手県建設業協会
東日本大震災における道路啓開等作業従事者証言集
東日本大震災における被災現場の最前線で、地元建設業者は人命救助活動や道路啓開作業、応急・復旧作業などにあたりました。その活動は、震災当日から翌日にかけて始まって い ました。
地元を熟知して、重機類を保有する地元建設業者は当初、緊急車両などの通行を確保する為の道路啓開作業(1車線だけでも通行できるようにする)が主な活動でした。行政 や 地元住民との信頼関係を築いていたことが迅速な活動につながりました。
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~では、最前線で作業にあたった方々の「生の声」をお伝えします。建設業者が果たした役割について再確認するとともに、震災の実情を風化させないことを目的としております。
第35回は(株)共立土木(陸前高田市)鈴木正幸さんです。(株)共立土木 鈴木正幸さん(51歳:震災当時)
《職種》工事課長
《啓開作業時の作業内容》技術者・オペレーター
「その場所で暮らす人の気持ちになって」―震災直後から、陸前高田市の道路啓開に当たられていたのですか
いえ。私は自宅が大船渡市にあり、当日も大船渡市内の現場にいたものですから、当初は自宅待機でした。道路は津波で寸断され携帯も通じず、社長も社員も誰一人安否が分から なかったんです。また、息子夫婦と生後1カ月の孫、妊娠中の娘が私の自宅に避難してきたので、まずは身近な小さい命を守ることを最優先に行動していました。
―会社に合流したのはいつからですか
3月中旬、会社の近くにある普門寺というお寺に全社員が集まり、社長から会社として道路啓開に当たるという話を聞きました。しかしその時は車のガソリンも心許なく、その日も なんとか陸前高田までたどり着いた状態でしたので、私を含め大船渡市から通勤している3人が合流したのは会社が車を手配してくれた3月下旬からでした。
―現地ではどのような作業を
重機オペレーターとして広田の集積場と周辺の道路に1カ月半ほど、その後に矢作川、川原川、浜田川の3河川のがれき撤去に3カ月ほど当たりました。どこを見渡しても一面がれきの山で、その惨状に改めて驚きましたが、少しでも地域の人たちの力になることができればという気持ちも強くなりました。
―河川のがれき撤去はどのように
重機2台でがれきを集積し、グラップルでキャリアダンプに積み込むという段取りで進めました。7㌧のクローラーダンプは場所を選ばずに入っていけますが、川沿いは地盤が軟弱ですし、川を越えての対岸の撤去や泥の中のがれき撤去には時間がかかりました。
また、津波で折れた松の木が河川の中に相当数流れ込んでいました。どの松にも砂がこびりついていたので、チェーンソーの刃がすぐに摩耗して使い物にならなくなるんです よ。絶えずやすりで研いでいましたし、買い換えも頻繁でした。―作業をする上での注意点は
がれき撤去と言っても、二つと同じ場所、同じ作業はありませんから、その状況に応じた臨機応変の対応が必要と感じました。また、単純にがれきを撤去するのではなく、集積場 に運んだ後の分別など先々のことを考えながら作業することが大事です。
また、地域住民の方が不便に思っていること、お願いごとなどがあれば、すぐに対応するよう心掛けていました。地元の人が通行しづらい場所のがれき撤去を行いましたし、 道路が崩れている場所には角材を活用して、簡単な橋を通したりもしました。―建設業だからこそできる手助けですね
がれきの撤去は大事な仕事ですが、地域の中で困っている人がいれば、不便を解消して少しでも暮らしやすい状況を整えることも、私たちの役割だと思うんですよ。私自身、この場所で暮らしていたならばどう考えるかを第一に考えて動いていましたね。
(おわり)
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~
href="https://www.iwaken.or.jp/info/2015/03/04_1755.html">第38回(最終回) (株)山千(大槌町)代表取締役 山崎 真さん
href="https://www.iwaken.or.jp/info/2015/02/21_1742.html">第37回 (株)藤原組(大槌町)専務取締役 藤原 士さん
第36回 松村建設(株)(大槌町)土木部長 松村康文さん
第35回 (株)共立土木(陸前高田市)工事課長 鈴木正幸さん
第34回 (株)かねまつ建設(陸前高田市)取締役専務 菊池秀明さん
第33回 (株)長谷川建設(陸前高田市)営業部長 吉田昭彦さん
第32回 南建設(株)(軽米町)取締役社長室長 田中一也さん
第31回 (株)中舘建設(二戸市)土木部長 大鳥義博さん
第30回 成和建設(株)(花巻市)重機車両部執行役員部長 民部田正道さん
第29回 (株)小原建設(北上市)小田島愼さん
第28回 髙惣建設(株)(奥州市)高田営業所長 小野寺正晴さん
第27回 (株)山友建設(一関市)熊谷堅美さん
第26回 (株)山喜建設(一関市)三浦公夫さん
第25回 横田建設(株)(一関市)高田営業所長 新沼克則さん
第24回 鈴木工材(株)(一関市)菊地勝則さん
第23回 宇部建設(株)(一関市)工事副長 千田祐欣さん
第22回 (有)矢萩建設(一関市)重機主任 関村一男さん
第21回 吉田建設(株)(盛岡市)三浦一春さん
第20回 盛岡舗道(株)(盛岡市)機械係長 高橋直美さん
第19回 三陸土建(株)(盛岡市)伊藤成美さん
第18回 松田重機工業(株)(遠野市)重機部長 菊池隆悦さん
第17回 佐藤工業(株)(遠野市)飯森清幸さん
第16回 (株)テラ(遠野市)常務取締役 小笠原秀夫さん
第15回 (株)晴山石材建設(野田村)上川寿隆さん
第14回 (株)晴山組(野田村)山田 勉さん
第13回 兼田建設(株)(久慈市)大尻明男さん
第12回 佐藤建設(株)(田野畑村)常務取締役 片座康行さん
第11回 富山建設(有)(山田町)代表取締役 富山由光さん
第10回 三好建設(株)(宮古市)土木部次長 小川 司さん
第9回 大崎建設(株)(田野畑村)橘 良友さん
第8回 工藤建設(株)(岩泉町)土木部技士 西倉淳也さん
第7回 刈屋建設(株)(宮古市)五十嵐 和朗さん
第6回 (株)小松組(大船渡市)代表取締役 小松 格さん
第5回 (株)青紀土木(釜石市)萬 寛さん
第4回 佐野建設(株)(釜石市)八重樫充さん
第3回 新光建設(株)(釜石市)工事課長 中村 明さん
第2回 (株)中澤組(大船渡市)機材主任 霜山 隆さん
第1回 (有)熊谷技工(大船渡市)専務取締役 熊谷芳男さん
月別アーカイブ
- 2024年
- 2023年
- 2022年
- 2021年
- 2020年
- 2019年
- 2018年
- 2017年
- 2016年
- 2015年
- 2014年
- 2013年
- 2012年
- 2011年
- 2010年
- 2009年
- 2008年
- 2007年
- 2006年