いわけんブログ
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~(第12回)
2014年4月14日岩手県建設業協会
東日本大震災における道路啓開等作業従事者証言集
東日本大震災における被災現場の最前線で、地元建設業者は人命救助活動や道路啓開作業、応急・復旧作業などにあたりました。その活動は、震災当日から翌日にかけて始まっていました。
地元を熟知して、重機類を保有する地元建設業者は当初、緊急車両などの通行を確保する為の道路啓開作業(1車線だけでも通行できるようにする)が主な活動でした。行政や地元住民との信頼関係を築いていたことが迅速な活動につながりました。
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~では、最前線で作業にあたった方々の「生の声」をお伝えします。建設業者が果たした役割について再確認するとともに、震災の実情を風化させないことを目的としております。
第12回は田野畑村の佐藤建設(株)常務取締役 片座康行さんです。佐藤建設(株)常務取締役 片座康行さん(58歳:震災当時)
《職種》土木工事の積算、現場全体のマネジメント
《啓開作業時の作業内容》指示役
「公共事業を請け負う者の役割として」―震災当日の様子を教えてください。
その時は協会支部の事務所にいて、事務所の建物が倒壊するのではと思うぐらいの激しい揺れでした。揺れが収まった後は道路パトロールのため、会社に寄らずに直接海側に向かいました。
―当日中に海の近くまで入れたのですか。
村役場前から平井賀に下りる村道のS字カーブから、平井賀の集落を津波が襲い家が流されている様子が目に入りました。本当に恐ろしく、心臓が締め付けられるような感覚でした。そこから先は消防団に止められて進めず、現地入りしたのは翌朝早くです。
現地では、横倒しになったダンプやさっぱ船が山の中腹まで打ち上げられていました。バックホウだけでは対応できないと直感してグラップル1台を現地近くまで運びましたが、勝手な判断で動かせないので、指示を仰ぐため役場に出向きました。―その場で、出動依頼が出たのですか。
役場から出動の指示が出たのは数日後です。役場と消防団が行方不明者の捜索をしていたのですが、がれきに阻まれ現地の状況が分からないので、建設会社を呼ぼうということになったようです。
うちの会社が役場に一番近いので、私が全体の連絡調整係を担当しました。島越、平井賀、羅賀など大きく5現場に割り振って、各現場で判断が付かない課題を吸い上げ、役場と協議して伝達する形を取りました。現場では機械1台に対して最低でも消防2人と警察1人が付いて被災者の捜索と道路啓開を同時並行で進めました。―現場に入った時の思いは。
良いも悪いも、怖いも怖くないも、とにかくやるしかないなと。災害時に最前線で動くのが、公共事業を受注する建設業の役割だから、至極当然のことだと受け止めました。
―重機などは確保できたのですか。
グラップルは台数が少なかったですね。林業関係者が村内だけではなく葛巻町からも都合を付けて、最終的に16 台を集めました。ダンプ不足も深刻でしたが、盛岡支部の斡旋で2社から応援をいただき何とか間に合わせることができました。
―田野畑では被災した人たちも作業を手伝ったんですよね。
被災した方にはプラスチックやナイロンの片付けなど軽作業を手伝っていただきました。救援物資の中には作業服やヘルメット、マスクなどがあったので、どの地区から作業に来てくれた人なのか、一目で確認できるようにしました。
―作業を終えて、どのような思いを持ちましたか。
田野畑は、他市町村と比べて作業を比較的早く進めることができました。これは行政と業界、または業界の中などそれぞれのチームワークが良かった結果だと思っています。
チームワークと言えば、田野畑には米軍も入っていましたが、トップの指示でしか動かないんですね。融通が利かない半面、トップの号令一つで迅速に行動するのはさすがだなと思いました。余談ですが、米軍が入る地区にトイレを事前に設置するなど米軍の後方支援をしたのは、私たち建設会社なんですよ。
(おわり)
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~
href="https://www.iwaken.or.jp/info/2015/03/04_1755.html">第38回(最終回) (株)山千(大槌町)代表取締役 山崎 真さん
href="https://www.iwaken.or.jp/info/2015/02/21_1742.html">第37回 (株)藤原組(大槌町)専務取締役 藤原 士さん
第36回 松村建設(株)(大槌町)土木部長 松村康文さん
第35回 (株)共立土木(陸前高田市)工事課長 鈴木正幸さん
第34回 (株)かねまつ建設(陸前高田市)取締役専務 菊池秀明さん
第33回 (株)長谷川建設(陸前高田市)営業部長 吉田昭彦さん
第32回 南建設(株)(軽米町)取締役社長室長 田中一也さん
第31回 (株)中舘建設(二戸市)土木部長 大鳥義博さん
第30回 成和建設(株)(花巻市)重機車両部執行役員部長 民部田正道さん
第29回 (株)小原建設(北上市)小田島愼さん
第28回 髙惣建設(株)(奥州市)高田営業所長 小野寺正晴さん
第27回 (株)山友建設(一関市)熊谷堅美さん
第26回 (株)山喜建設(一関市)三浦公夫さん
第25回 横田建設(株)(一関市)高田営業所長 新沼克則さん
第24回 鈴木工材(株)(一関市)菊地勝則さん
第23回 宇部建設(株)(一関市)工事副長 千田祐欣さん
第22回 (有)矢萩建設(一関市)重機主任 関村一男さん
第21回 吉田建設(株)(盛岡市)三浦一春さん
第20回 盛岡舗道(株)(盛岡市)機械係長 高橋直美さん
第19回 三陸土建(株)(盛岡市)伊藤成美さん
第18回 松田重機工業(株)(遠野市)重機部長 菊池隆悦さん
第17回 佐藤工業(株)(遠野市)飯森清幸さん
第16回 (株)テラ(遠野市)常務取締役 小笠原秀夫さん
第15回 (株)晴山石材建設(野田村)上川寿隆さん
第14回 (株)晴山組(野田村)山田 勉さん
第13回 兼田建設(株)(久慈市)大尻明男さん
第12回 佐藤建設(株)(田野畑村)常務取締役 片座康行さん
第11回 富山建設(有)(山田町)代表取締役 富山由光さん
第10回 三好建設(株)(宮古市)土木部次長 小川 司さん
第9回 大崎建設(株)(田野畑村)橘 良友さん
第8回 工藤建設(株)(岩泉町)土木部技士 西倉淳也さん
第7回 刈屋建設(株)(宮古市)五十嵐 和朗さん
第6回 (株)小松組(大船渡市)代表取締役 小松 格さん
第5回 (株)青紀土木(釜石市)萬 寛さん
第4回 佐野建設(株)(釜石市)八重樫充さん
第3回 新光建設(株)(釜石市)工事課長 中村 明さん
第2回 (株)中澤組(大船渡市)機材主任 霜山 隆さん
第1回 (有)熊谷技工(大船渡市)専務取締役 熊谷芳男さん
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