いわけんブログ
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~(第10回)
2014年3月21日岩手県建設業協会
東日本大震災における道路啓開等作業従事者証言集
東日本大震災における被災現場の最前線で、地元建設業者は人命救助活動や道路啓開作業、応急・復旧作業などにあたりました。その活動は、震災当日から翌日にかけて始まっていました。
地元を熟知して、重機類を保有する地元建設業者は当初、緊急車両などの通行を確保する為の道路啓開作業(1車線だけでも通行できるようにする)が主な活動でした。行政や地元住民との信頼関係を築いていたことが迅速な活動につながりました。
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~では、最前線で作業にあたった方々の「生の声」をお伝えします。建設業者が果たした役割について再確認するとともに、震災の実情を風化させないことを目的としております。
第10回は三好建設(株)土木部次長の小川司さんです。三好建設(株)(宮古市)土木部次長 小川 司さん(46歳:震災当時)
《職種》現場技術者、現場代理人
《啓開作業時の作業内容》指示役
「地域とのコミュニケ―ションが大事だと感じました」
―震災発生直後の対応は
国交省との災害協定にもとづき、国道45号線金浜地区の閉鎖作業に向かいました。車が混んでいるなどしたため、なかなか現地に辿り着けませんでした。やっと到着した時には既に金浜地区が津波に飲み込まれ、近くの人たちが宮古道路に避難していました。倒壊した家から救助される人の姿を目の当たりにしました。
その状況を見たときは、正直、宮古・三陸は終わったなと思いました。―その後の対応は
震災2日後、県道重茂半島線里地区で、橋梁が流された現場の仮復旧に向かいました。橋の代わりに仮設盛土で道路を通す作業です。山田町側の浜川目も被災していたため、沿線の千鶏、石浜地区が完全に孤立していました。
小さい川でしたが、川に渡した丸太をつたって救援物資を運んでいる状態でした。自衛隊が大勢入っていて、横並びになって物資を手渡しで運んだことがありました。
「病院に早く行きたい」という高齢者の方もいて、一刻も早く通してあげたい気持ちでした。1週間で開通に至り、その後は重茂の里地区でガレキ撤去作業に入りました。―つらかったことはありますか
倒壊した家であっても生活感が残っていて、気を使いながら作業を進めました。「その下に大事なものがあるので見たい」など、家主の方から声を掛けられるので、出来る限り要望に応えました。
被災した同僚は家族を親せきに預け、取引先のリース会社の敷地に3坪ハウスを借りて現場に通っていました。その姿を見て、自分も頑張ろうという強い気持ちが生まれました。―厳しい状況の中でも作業が進められた要因は
地元の方に助けられました。余震が頻繁に来ていた時には避難する場所を教えてもらったり、逃げろと声を掛けられたりしました。漁協のスタンドから優先して燃料の供給を受け、食料が不足している時には炊き出しを譲って頂いたこともありました。まだまだ使えそうな漁具が散乱していましたが、作業優先で撤去するよう指示を頂きました。経路の段取りや地主さんへの声掛けもして頂きました。
「作業をしなければ次に進めないから」と前向きな言葉をいただきました。地元の協力があったからこそ、現場の裁量で作業を進めることが出来たと思っています。
今も重茂で災害復旧工事を行っていますが、顔を知っているので工事を進めやすいです。地域とのコミュニケ―ションが大事だと改めて感じました。―振り返ってみて、どの様な思いがありますか
孤立した地区に通じる仮設道路が開通する日、地域の人たちが待ち構えていました。車が絶え間なく通って、車の中のほっとした表情を見たとき、喜びが込み上げて来ました。自分達の仕事に誇りが持てました。
我々建設業は復興に向けてなくてはならない職業ですが、高齢化が進んでいます。若い人たちが誇りを持って頑張れるような職場にしたいです。
(おわり)
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~
href="https://www.iwaken.or.jp/info/2015/03/04_1755.html">第38回(最終回) (株)山千(大槌町)代表取締役 山崎 真さん
href="https://www.iwaken.or.jp/info/2015/02/21_1742.html">第37回 (株)藤原組(大槌町)専務取締役 藤原 士さん
第36回 松村建設(株)(大槌町)土木部長 松村康文さん
第35回 (株)共立土木(陸前高田市)工事課長 鈴木正幸さん
第34回 (株)かねまつ建設(陸前高田市)取締役専務 菊池秀明さん
第33回 (株)長谷川建設(陸前高田市)営業部長 吉田昭彦さん
第32回 南建設(株)(軽米町)取締役社長室長 田中一也さん
第31回 (株)中舘建設(二戸市)土木部長 大鳥義博さん
第30回 成和建設(株)(花巻市)重機車両部執行役員部長 民部田正道さん
第29回 (株)小原建設(北上市)小田島愼さん
第28回 髙惣建設(株)(奥州市)高田営業所長 小野寺正晴さん
第27回 (株)山友建設(一関市)熊谷堅美さん
第26回 (株)山喜建設(一関市)三浦公夫さん
第25回 横田建設(株)(一関市)高田営業所長 新沼克則さん
第24回 鈴木工材(株)(一関市)菊地勝則さん
第23回 宇部建設(株)(一関市)工事副長 千田祐欣さん
第22回 (有)矢萩建設(一関市)重機主任 関村一男さん
第21回 吉田建設(株)(盛岡市)三浦一春さん
第20回 盛岡舗道(株)(盛岡市)機械係長 高橋直美さん
第19回 三陸土建(株)(盛岡市)伊藤成美さん
第18回 松田重機工業(株)(遠野市)重機部長 菊池隆悦さん
第17回 佐藤工業(株)(遠野市)飯森清幸さん
第16回 (株)テラ(遠野市)常務取締役 小笠原秀夫さん
第15回 (株)晴山石材建設(野田村)上川寿隆さん
第14回 (株)晴山組(野田村)山田 勉さん
第13回 兼田建設(株)(久慈市)大尻明男さん
第12回 佐藤建設(株)(田野畑村)常務取締役 片座康行さん
第11回 富山建設(有)(山田町)代表取締役 富山由光さん
第10回 三好建設(株)(宮古市)土木部次長 小川 司さん
第9回 大崎建設(株)(田野畑村)橘 良友さん
第8回 工藤建設(株)(岩泉町)土木部技士 西倉淳也さん
第7回 刈屋建設(株)(宮古市)五十嵐 和朗さん
第6回 (株)小松組(大船渡市)代表取締役 小松 格さん
第5回 (株)青紀土木(釜石市)萬 寛さん
第4回 佐野建設(株)(釜石市)八重樫充さん
第3回 新光建設(株)(釜石市)工事課長 中村 明さん
第2回 (株)中澤組(大船渡市)機材主任 霜山 隆さん
第1回 (有)熊谷技工(大船渡市)専務取締役 熊谷芳男さん
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