いわけんブログ
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~(第37回)
2015年2月21日岩手県建設業協会
東日本大震災における道路啓開等作業従事者証言集
東日本大震災における被災現場の最前線で、地元建設業者は人命救助活動や道路啓開作業、応急・復旧作業などにあたりました。その活動は、震災当日から翌日にかけて始まってい ました。
地元を熟知して、重機類を保有する地元建設業者は当初、緊急車両などの通行を確保する為の道路啓開作業(1車線だけでも通行できるようにする)が主な活動でした。行政や 地元住民との信頼関係を築いていたことが迅速な活動につながりました。
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~では、最前線で作業にあたった方々の「生の声」をお伝えします。建設業者が果たした役割について再確認す るとともに、震災の実情を風化させないことを目的としております。
第37回は(株)藤原組(大槌町)専務取締役 藤原 士さんです。
(株)藤原組 藤原 士さん(33歳:震災当時)
《職種》専務取締役
《啓開作業時の作業内容》指示役・オペレーター
「境遇の違いを自覚しながら」
―震災当日の様子は
当日は小鎚にある県の林道開設工事の現場にいました。学校にいる子供たちが心配で市街地に向かったのですが、すでに津波が来た後で、入ることができませんでした。
その晩は社員も下請の人たちも帰宅できなかったので、私の自宅で15人ほどが夜を明かしました。現場の立ち会いに来ていた県の職員も帰ることができず、私の家に泊まって もらいました。―翌日からすぐに応急対応に動かれたのですか
市街地の水は引いていたのですが、何から手を付ければよいのか、皆目見当が付かないという感じでした。社員も一旦は帰したのですが、自分たちに何ができるか、自宅が被災して いない社員と一緒に考え、私たちの独断で山側のルートを確保することにしました。
具体的には小鎚から栗林に抜けて笛吹峠に向かう五本松林道と、金沢方面に向かう平田沢林道の2路線を除雪しました。途中で崩落していた個所の修復も行い、道路が通れる ようになったのは14日頃だったと思います。―市街地の対応にはいつから入ったのですか
岩間建設工業社長の岩間公人さん(当時取締役)が会社に来て、町内の会社が動き出すということで、声をかけてくれました。松村建設さんや自衛隊が先行して動いており、私たち は倒壊した送電線の撤去や地盤沈下した道路のかさ上げ作業を行いました。
―燃料や食事の確保も大変だったと思います
燃料は町内のガソリンスタンドを見つけて、許可をいただいた上で海水が入っていないタンクから油を使わせてもらいました。ほかにも砕石場から都合を付けてもらったり、行政に 協力していただきながら、なんとか作業をストップせずに済みました。
食事は炊き出しのおにぎりを一つか二つでしたが、空腹感や疲労感はなかったですね。休み無しで1カ月半は働き通しだったと思います。初めて休みをもらったときには、倒 れ込んで寝てしまいました。―町全体が被災し、つらいことも多かったと思いますが
何がつらいと聞かれれば、すべてつらいことだけです。私は1カ月で5人のご遺体を見つけましたが、自分でも意外なほど動揺することはなく、むしろ「見つかってよかった」とい う気持ちが強かったです。ただしご遺体を前に家族の方が悲しんでいる姿を見るのはつらかったですね。
私は会社も自宅も家族も無事でしたから、被災された人たちの気持ちを理解しているつもりでも、本当の部分では分からないのだと思います。だからこそ境遇の違いを自覚し 、その上で作業に当たるよう心掛けていました。―震災を振り返っての教訓は
なんと言っても、物よりも命です。物は買い換えることができても命は取り返しが付きませんから、最後は体一つで逃げるしかないんです。そのためにも避難路と防災無線の整備は 欠かせないと思います。
―藤原さんは若いですから、大槌町の将来について考えることも多いのではないですか
町を出ていく人も多いですし、先々が見通せませんからね。みんな今を生きるのに精一杯で...。私たちも過去に経験したことがないような仕事に、試行錯誤の毎日です。
(おわり)
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~
href="https://www.iwaken.or.jp/info/2015/03/04_1755.html">第38回(最終回) (株)山千(大槌町)代表取締役 山崎 真さん
href="https://www.iwaken.or.jp/info/2015/02/21_1742.html">第37回 (株)藤原組(大槌町)専務取締役 藤原 士さん
第36回 松村建設(株)(大槌町)土木部長 松村康文さん
第35回 (株)共立土木(陸前高田市)工事課長 鈴木正幸さん
第34回 (株)かねまつ建設(陸前高田市)取締役専務 菊池秀明さん
第33回 (株)長谷川建設(陸前高田市)営業部長 吉田昭彦さん
第32回 南建設(株)(軽米町)取締役社長室長 田中一也さん
第31回 (株)中舘建設(二戸市)土木部長 大鳥義博さん
第30回 成和建設(株)(花巻市)重機車両部執行役員部長 民部田正道さん
第29回 (株)小原建設(北上市)小田島愼さん
第28回 髙惣建設(株)(奥州市)高田営業所長 小野寺正晴さん
第27回 (株)山友建設(一関市)熊谷堅美さん
第26回 (株)山喜建設(一関市)三浦公夫さん
第25回 横田建設(株)(一関市)高田営業所長 新沼克則さん
第24回 鈴木工材(株)(一関市)菊地勝則さん
第23回 宇部建設(株)(一関市)工事副長 千田祐欣さん
第22回 (有)矢萩建設(一関市)重機主任 関村一男さん
第21回 吉田建設(株)(盛岡市)三浦一春さん
第20回 盛岡舗道(株)(盛岡市)機械係長 高橋直美さん
第19回 三陸土建(株)(盛岡市)伊藤成美さん
第18回 松田重機工業(株)(遠野市)重機部長 菊池隆悦さん
第17回 佐藤工業(株)(遠野市)飯森清幸さん
第16回 (株)テラ(遠野市)常務取締役 小笠原秀夫さん
第15回 (株)晴山石材建設(野田村)上川寿隆さん
第14回 (株)晴山組(野田村)山田 勉さん
第13回 兼田建設(株)(久慈市)大尻明男さん
第12回 佐藤建設(株)(田野畑村)常務取締役 片座康行さん
第11回 富山建設(有)(山田町)代表取締役 富山由光さん
第10回 三好建設(株)(宮古市)土木部次長 小川 司さん
第9回 大崎建設(株)(田野畑村)橘 良友さん
第8回 工藤建設(株)(岩泉町)土木部技士 西倉淳也さん
第7回 刈屋建設(株)(宮古市)五十嵐 和朗さん
第6回 (株)小松組(大船渡市)代表取締役 小松 格さん
第5回 (株)青紀土木(釜石市)萬 寛さん
第4回 佐野建設(株)(釜石市)八重樫充さん
第3回 新光建設(株)(釜石市)工事課長 中村 明さん
第2回 (株)中澤組(大船渡市)機材主任 霜山 隆さん
第1回 (有)熊谷技工(大船渡市)専務取締役 熊谷芳男さん
月別アーカイブ
- 2024年
- 2023年
- 2022年
- 2021年
- 2020年
- 2019年
- 2018年
- 2017年
- 2016年
- 2015年
- 2014年
- 2013年
- 2012年
- 2011年
- 2010年
- 2009年
- 2008年
- 2007年
- 2006年