いわけんブログ
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~(第28回)
2014年11月14日岩手県建設業協会
東日本大震災における道路啓開等作業従事者証言集
東日本大震災における被災現場の最前線で、地元建設業者は人命救助活動や道路啓開作業、応急・復旧作業などにあたりました。その活動は、震災当日から翌日にかけて始まってい ました。
地元を熟知して、重機類を保有する地元建設業者は当初、緊急車両などの通行を確保する為の道路啓開作業(1車線だけでも通行できるようにする)が主な活動でした。行政や 地元住民との信頼関係を築いていたことが迅速な活動につながりました。
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~では、最前線で作業にあたった方々の「生の声」をお伝えします。建設業者が果たした役割について再確認す るとともに、震災の実情を風化させないことを目的としております。
(第16回より、内陸からの後方支援を掲載しています)
第28回は髙惣建設(株)(奥州市) 小野寺正晴さんです。髙惣建設(株)小野寺正晴 さん(56 歳・震災当時)
《職種》高田営業所長
《啓開作業時の作業内容》指示役
「会社もお金も関係なく」―3月11 日はどのような様子でしたか
竹駒にある高田営業所の職員を高台に避難させて、私は市街地の自宅に戻りました。市街地は避難する車で渋滞しているし、最初3メートルと言われていた津波の高さが10メートルの大津波と聞き、とりあえず犬だけ連れて営業所に戻りました。しばらくすると津波が私たちのいる場所に到達し、わずかの差で逃げずに被害に遭ったり、車ごと津波にさらわれた人もいました。
その晩は高台で一晩中ラジオを聞いていましたが、聞こえてくるのは他市町村の情報だけ。肝心の陸前高田の詳しい状況が分からず、ひたすら夜明けを待っていました。―翌日はどのような動きを
夜明けと同時に自宅方面に向かいましたが、がれきが散乱して木材の破片や釘が飛び出しているし、砂と水とで100メートル進むのがやっと。自衛隊員が人命救助に入っており、ご遺体も数多く見かけました。
生活物資の調達に住田町に行く途中、私たちを心配して陸前高田に向かってきた当社土木課長の小原正にばったり会ったんですよ。そこで小原課長に職員の無事を伝え、必要な資材や機械などをメモして渡し、その日のうちに対応してもらいました。―道路啓開はどのような形で始まったのですか
自衛隊や警察、消防、国交省などの関係者が集まって話し合いを持ったのは、12 日の夕方だったと思います。その時点では市からの指示は出ていませんが、動ける人が機械を持ち寄り道路を開けるしかないと考え、最初は会社もお金も関係なく5人ほどの個人の集まりで道路啓開をスタートしました。まずは高田一中前を開き、農免道から広田半島に向かうルートを通す方針も自分たちで決めました。
―機械類は確保できたのですか
最初はとにかく手持ちの機械をかき集めての作業です。3日後ぐらいから本社を通じて内陸のリース屋さんに声を掛けて、グラップルとキャリアダンプを各担当者に預けました。私も1年ぐらいはブルドーザーに乗り、一日の半分はブルドーザー、残りは雑用や各種調整という毎日でしたね。
本社は私が動きやすいようにと、物資や資機材などバックアップしてくれました。また奥州市内の企業や店舗からの支援物資を避難所に届けたり、安否情報を奥州市のコミュニティーFMで放送するなど、小原課長を中心に内陸部として可能な限りの被災地支援をしていたようです。―組織的な動きになったのはどの段階からですか
作業自体は早い時期から市役所とコミュニケーションを取りながら進めていましたが、市の方針が明確になり、陸前高田市建設業協会と市との災害協定に基づく形で作業することが決まったのは1カ月後ぐらいです。以降は比較的スムーズに仕事が進みました。
自衛隊とも毎日打ち合わせをして、機械が壊れたときは修理を手伝うなど、連携が取れていました。福井県の鯖江駐屯地の部隊で若い隊員さんも多く、当時の隊長さんは今も陸前高田に来てくれるなど交流が続いています。髙惣建設(株)提供:陸前高田市 2012年5月7日空撮写真
髙惣建設(株)提供:陸前高田市 2014年5月8日空撮写真
(おわり)
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~
第38回(最終回) (株)山千(大槌町)代表取締役 山崎 真さん
第37回 (株)藤原組(大槌町)専務取締役 藤原 士さん
第36回 松村建設(株)(大槌町)土木部長 松村康文さん
第35回 (株)共立土木(陸前高田市)工事課長 鈴木正幸さん
第34回 (株)かねまつ建設(陸前高田市)取締役専務 菊池秀明さん
第33回 (株)長谷川建設(陸前高田市)営業部長 吉田昭彦さん
第32回 南建設(株)(軽米町)取締役社長室長 田中一也さん
第31回 (株)中舘建設(二戸市)土木部長 大鳥義博さん
第30回 成和建設(株)(花巻市)重機車両部執行役員部長 民部田正道さん
第29回 (株)小原建設(北上市)小田島愼さん
第28回 髙惣建設(株)(奥州市)高田営業所長 小野寺正晴さん
第27回 (株)山友建設(一関市)熊谷堅美さん
第26回 (株)山喜建設(一関市)三浦公夫さん
第25回 横田建設(株)(一関市)高田営業所長 新沼克則さん
第24回 鈴木工材(株)(一関市)菊地勝則さん
第23回 宇部建設(株)(一関市)工事副長 千田祐欣さん
第22回 (有)矢萩建設(一関市)重機主任 関村一男さん
第21回 吉田建設(株)(盛岡市)三浦一春さん
第20回 盛岡舗道(株)(盛岡市)機械係長 高橋直美さん
第19回 三陸土建(株)(盛岡市)伊藤成美さん
第18回 松田重機工業(株)(遠野市)重機部長 菊池隆悦さん
第17回 佐藤工業(株)(遠野市)飯森清幸さん
第16回 (株)テラ(遠野市)常務取締役 小笠原秀夫さん
第15回 (株)晴山石材建設(野田村)上川寿隆さん
第14回 (株)晴山組(野田村)山田 勉さん
第13回 兼田建設(株)(久慈市)大尻明男さん
第12回 佐藤建設(株)(田野畑村)常務取締役 片座康行さん
第11回 富山建設(有)(山田町)代表取締役 富山由光さん
第10回 三好建設(株)(宮古市)土木部次長 小川 司さん
第9回 大崎建設(株)(田野畑村)橘 良友さん
第8回 工藤建設(株)(岩泉町)土木部技士 西倉淳也さん
第7回 刈屋建設(株)(宮古市)五十嵐 和朗さん
第6回 (株)小松組(大船渡市)代表取締役 小松 格さん
第5回 (株)青紀土木(釜石市)萬 寛さん
第4回 佐野建設(株)(釜石市)八重樫充さん
第3回 新光建設(株)(釜石市)工事課長 中村 明さん
第2回 (株)中澤組(大船渡市)機材主任 霜山 隆さん
第1回 (有)熊谷技工(大船渡市)専務取締役 熊谷芳男さん
月別アーカイブ
- 2024年
- 2023年
- 2022年
- 2021年
- 2020年
- 2019年
- 2018年
- 2017年
- 2016年
- 2015年
- 2014年
- 2013年
- 2012年
- 2011年
- 2010年
- 2009年
- 2008年
- 2007年
- 2006年