いわけんブログ
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~(第29回)
2014年11月29日岩手県建設業協会
東日本大震災における道路啓開等作業従事者証言集
東日本大震災における被災現場の最前線で、地元建設業者は人命救助活動や道路啓開作業、応急・復旧作業などにあたりました。その活動は、震災当日から翌日にかけて始まってい ました。
地元を熟知して、重機類を保有する地元建設業者は当初、緊急車両などの通行を確保する為の道路啓開作業(1車線だけでも通行できるようにする)が主な活動でした。行政や 地元住民との信頼関係を築いていたことが迅速な活動につながりました。
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~では、最前線で作業にあたった方々の「生の声」をお伝えします。建設業者が果たした役割について再確認するとともに、震災の実情を風化させないことを目的としております。
(第16回より、内陸からの後方支援を掲載しています)
第29回は(株)小原建設(北上市)小田島 愼 さんです。(株)小原建設 小田島 愼 さん(31歳・震災当時)
《職種》職長・オペレーター
《啓開作業時の作業内容》オペレーター
「被災された方を思えば、自分の不便など」―震災当日は、どこで仕事をしていたのですか
当日は北上市内で河川の築堤工事の現場にいました。現場再開のめどが立たず一旦は待機になったのですが、国道107 号で道路のクラックや法面の崩落などが発生していたので、翌日から対応に当たりました。
―沿岸に最初に入ったのはいつですか
震災から5日後です。当社で施工していた宮古市松山の現場で、橋脚にモルタルを注入する応急対応で現地入りしました。テレビでは分からない被災地という場が持つ雰囲気に、ただ驚くしかなかったのを覚えています。
その後、会社で被災地支援に入るという話を聞いたときも、何か被災地の役に立ちたい、そして行くならば早いうちにと思い、2班体制の前半に手を挙げました。―本格的な沿岸部での作業は
地元の大坂建設さんの応援で、4月2日から山田町に入りました。バックホウ3台とがれき運搬用のダンプ1台の4台体制を取って、主に大沢地区を中心に宅地と歩道のがれき撤去に当たりました。
バックホウ1台に対して自衛隊員が1人付き、一緒に動いていただきました。若い人が多かったのですが、規律も服装もしっかりとしていて、立派でしたね。気も張っていましたし無駄話をするような雰囲気ではなかったので、あいさつ程度しか言葉は交わしませんでしたが。―現地ではどのようなことに気をつけられましたか
やはりがれきの下に行方不明者がいるかもしれないので、手つかずの場所に入るときは緊張しました。ただし、行方不明者を見つけることも自分たちの仕事なんだと思うようにしていました。
―被災された方とは会われたのですか
60代ぐらいの夫婦の方から「行方不明の娘がこの辺りにいるかもしれないから、がれきを撤去してほしい」と言われたことがありました。私としては言われた通りがれきを動かすくらいしかできないのですが、結局見つけてあげることができず、本当に悲しかったです。感謝の言葉を掛けていただいたのですが...。
―つらいことも多かったと思います
いえ、私は内陸の人間ですから、多少の不便があっても被災された皆さんの苦労とは比べものになりません。なので、不便やわがままな気持ちなど持つべきではないと自分自身を戒めていました。大坂建設の社員の方も、ご自身も津波の被災者であるにも関わらず、私たちがスムーズに働けるよう色々と手配をしていただき、私の方こそ助けていただきました。
―作業を終えた時、どのような思いを持たれましたか
ほかの現場に入ることが決まり、会社としての一区切りが付くまで作業できなかったのは少し心残りでした。でも昨年は陸前高田市の圃場の災害復旧現場、今年からは三陸沿岸道路の現場を担当しており、復興の現場に携わらせていただいています。
震災から3年以上を経て、記憶の風化を実感しています。復興を遂げるまでみんなで協力しながら、私自身もあの時の記憶と思いをしっかりと持ち続けていきたいと思っています。
(おわり)
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~
href="https://www.iwaken.or.jp/info/2015/03/04_1755.html">第38回(最終回) (株)山千(大槌町)代表取締役 山崎 真さん
href="https://www.iwaken.or.jp/info/2015/02/21_1742.html">第37回 (株)藤原組(大槌町)専務取締役 藤原 士さん
第36回 松村建設(株)(大槌町)土木部長 松村康文さん
第35回 (株)共立土木(陸前高田市)工事課長 鈴木正幸さん
第34回 (株)かねまつ建設(陸前高田市)取締役専務 菊池秀明さん
第33回 (株)長谷川建設(陸前高田市)営業部長 吉田昭彦さん
第32回 南建設(株)(軽米町)取締役社長室長 田中一也さん
第31回 (株)中舘建設(二戸市)土木部長 大鳥義博さん
第30回 成和建設(株)(花巻市)重機車両部執行役員部長 民部田正道さん
第29回 (株)小原建設(北上市)小田島愼さん
第28回 髙惣建設(株)(奥州市)高田営業所長 小野寺正晴さん
第27回 (株)山友建設(一関市)熊谷堅美さん
第26回 (株)山喜建設(一関市)三浦公夫さん
第25回 横田建設(株)(一関市)高田営業所長 新沼克則さん
第24回 鈴木工材(株)(一関市)菊地勝則さん
第23回 宇部建設(株)(一関市)工事副長 千田祐欣さん
第22回 (有)矢萩建設(一関市)重機主任 関村一男さん
第21回 吉田建設(株)(盛岡市)三浦一春さん
第20回 盛岡舗道(株)(盛岡市)機械係長 高橋直美さん
第19回 三陸土建(株)(盛岡市)伊藤成美さん
第18回 松田重機工業(株)(遠野市)重機部長 菊池隆悦さん
第17回 佐藤工業(株)(遠野市)飯森清幸さん
第16回 (株)テラ(遠野市)常務取締役 小笠原秀夫さん
第15回 (株)晴山石材建設(野田村)上川寿隆さん
第14回 (株)晴山組(野田村)山田 勉さん
第13回 兼田建設(株)(久慈市)大尻明男さん
第12回 佐藤建設(株)(田野畑村)常務取締役 片座康行さん
第11回 富山建設(有)(山田町)代表取締役 富山由光さん
第10回 三好建設(株)(宮古市)土木部次長 小川 司さん
第9回 大崎建設(株)(田野畑村)橘 良友さん
第8回 工藤建設(株)(岩泉町)土木部技士 西倉淳也さん
第7回 刈屋建設(株)(宮古市)五十嵐 和朗さん
第6回 (株)小松組(大船渡市)代表取締役 小松 格さん
第5回 (株)青紀土木(釜石市)萬 寛さん
第4回 佐野建設(株)(釜石市)八重樫充さん
第3回 新光建設(株)(釜石市)工事課長 中村 明さん
第2回 (株)中澤組(大船渡市)機材主任 霜山 隆さん
第1回 (有)熊谷技工(大船渡市)専務取締役 熊谷芳男さん
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