いわけんブログ
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~(第11回)
2014年3月31日岩手県建設業協会
東日本大震災における道路啓開等作業従事者証言集
東日本大震災における被災現場の最前線で、地元建設業者は人命救助活動や道路啓開作業、応急・復旧作業などにあたりました。その活動は、震災当日から翌日にかけて始まっていました。
地元を熟知して、重機類を保有する地元建設業者は当初、緊急車両などの通行を確保する為の道路啓開作業(1車線だけでも通行できるようにする)が主な活動でした。行政や地元住民との信頼関係を築いていたことが迅速な活動につながりました。
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~では、最前線で作業にあたった方々の「生の声」をお伝えします。建設業者が果たした役割について再確認するとともに、震災の実情を風化させないことを目的としております。
第11回は山田町の富山建設(有)代表取締役 富山由光さんです。富山建設(有)代表取締役(専務取締役:当時)富山由光さん(46歳:震災当時)
《職種》経営者
《啓開作業時の作業内容》指示役兼オペレーター
「一刻も早く、道路を開けて応援を呼ぶルートを確保することだけに頭が働いていました」―震災発生直後の対応は
当日午後4時半ごろから国道45号線の通行止めに向かいました。夜11時頃からは山田町役場職員と業者が豊間根公民館に集まり、動ける重機の確保や被害状況などについて情報交換を行いました。町内や横断道路の状況を総合的に判断して、国道45号線を山田病院側と大沢側から啓開することを提案しました。町の中心部に応援が入れるようになると判断したからです。
―啓開作業の状況は
山田病院付近への進入路を確保するため、12日午前0時過ぎから午前3時頃まで林道を除雪しました。午前5時過ぎ、山田病院側と大沢側から国道45号線の啓開作業を始めました。バックホウとホイルローダーで道路上のガレキや土砂を道路両脇に寄せる作業です。
建物上部や高台に避難していた人がいたので、避難用に付けていた車両で緊急搬送しました。ご遺体を発見した際には警察に伝えながらの作業でした。夕方までには作業区間を2車線(一部1.5車線)で確保することが出来ました。
13日からは国道45号線の陸中山田駅から宝来橋の区間を自社3チームで入り、その後、町道の啓開を行いました。―連絡方法は
3チームで中心部に入った際には徒歩で私1人が連絡役として動きました。伝わらずに何かがあったら困る現場なので、ずれがあればその場で修正しました。状況を分かっている人間が1人で直接伝達すれば、情報にずれがないと思います。ルート選定と避難路を考え、作業員には絶対に怪我をさせないよう気を使いました。
―判断が早いと思いますが
日頃の工事を通じて、地元の地理を知っていることは大きいと思います。また、いつか災害は起きるものと日頃から想定したり、他地域で起きた災害について対応を考えたりしていました。
―当初はどの様な気持ちで作業をしていましたか
2ヵ月で会社はつぶれると思っていました。2ヵ月だけは給料を払って、オペレーターと機械で頑張ろうという覚悟でした。
―教訓はありますか
意味のある防災協定を行政と結ぶ必要があると感じました。ソフト的な面は行政が強いですが、ハード的な作業には建設業者が必要です。民間業者が柔軟に対応出来る体制が必要だと思います。
他県から役場に来ていた応援職員には、何かの際には応援に行くと伝えました。人命を考えれば、とにかくスピードです。施工能力があり、現場を歩けて、ルート選定ができるのは地元建設業者であり、そのサポート体制を築いておいて欲しいと伝えました。―振り返ってみて、今の思いは
12日の朝、山田病院の近くまで行きましたが病院には声を掛けませんでした。一刻も早く、道路を開けて応援を呼ぶルートを確保することだけに頭が働いていました。極限の中で非情になれたから、1日で道路を通すことが出来たと言えるかもしれません。いまだに、なぜ病院の人に声を掛けなかったのだろうと思います。どっちが正しかったのか、答えが出ていません。
(おわり)
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~
href="https://www.iwaken.or.jp/info/2015/03/04_1755.html">第38回(最終回) (株)山千(大槌町)代表取締役 山崎 真さん
href="https://www.iwaken.or.jp/info/2015/02/21_1742.html">第37回 (株)藤原組(大槌町)専務取締役 藤原 士さん
第36回 松村建設(株)(大槌町)土木部長 松村康文さん
第35回 (株)共立土木(陸前高田市)工事課長 鈴木正幸さん
第34回 (株)かねまつ建設(陸前高田市)取締役専務 菊池秀明さん
第33回 (株)長谷川建設(陸前高田市)営業部長 吉田昭彦さん
第32回 南建設(株)(軽米町)取締役社長室長 田中一也さん
第31回 (株)中舘建設(二戸市)土木部長 大鳥義博さん
第30回 成和建設(株)(花巻市)重機車両部執行役員部長 民部田正道さん
第29回 (株)小原建設(北上市)小田島愼さん
第28回 髙惣建設(株)(奥州市)高田営業所長 小野寺正晴さん
第27回 (株)山友建設(一関市)熊谷堅美さん
第26回 (株)山喜建設(一関市)三浦公夫さん
第25回 横田建設(株)(一関市)高田営業所長 新沼克則さん
第24回 鈴木工材(株)(一関市)菊地勝則さん
第23回 宇部建設(株)(一関市)工事副長 千田祐欣さん
第22回 (有)矢萩建設(一関市)重機主任 関村一男さん
第21回 吉田建設(株)(盛岡市)三浦一春さん
第20回 盛岡舗道(株)(盛岡市)機械係長 高橋直美さん
第19回 三陸土建(株)(盛岡市)伊藤成美さん
第18回 松田重機工業(株)(遠野市)重機部長 菊池隆悦さん
第17回 佐藤工業(株)(遠野市)飯森清幸さん
第16回 (株)テラ(遠野市)常務取締役 小笠原秀夫さん
第15回 (株)晴山石材建設(野田村)上川寿隆さん
第14回 (株)晴山組(野田村)山田 勉さん
第13回 兼田建設(株)(久慈市)大尻明男さん
第12回 佐藤建設(株)(田野畑村)常務取締役 片座康行さん
第11回 富山建設(有)(山田町)代表取締役 富山由光さん
第10回 三好建設(株)(宮古市)土木部次長 小川 司さん
第9回 大崎建設(株)(田野畑村)橘 良友さん
第8回 工藤建設(株)(岩泉町)土木部技士 西倉淳也さん
第7回 刈屋建設(株)(宮古市)五十嵐 和朗さん
第6回 (株)小松組(大船渡市)代表取締役 小松 格さん
第5回 (株)青紀土木(釜石市)萬 寛さん
第4回 佐野建設(株)(釜石市)八重樫充さん
第3回 新光建設(株)(釜石市)工事課長 中村 明さん
第2回 (株)中澤組(大船渡市)機材主任 霜山 隆さん
第1回 (有)熊谷技工(大船渡市)専務取締役 熊谷芳男さん
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