いわけんブログ
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~(第34回)
2015年1月26日岩手県建設業協会
東日本大震災における道路啓開等作業従事者証言集
東日本大震災における被災現場の最前線で、地元建設業者は人命救助活動や道路啓開作業、応急・復旧作業などにあたりました。その活動は、震災当日から翌日にかけて始まってい ました。
地元を熟知して、重機類を保有する地元建設業者は当初、緊急車両などの通行を確保する為の道路啓開作業(1車線だけでも通行できるようにする)が主な活動でした。行政や 地元住民との信頼関係を築いていたことが迅速な活動につながりました。
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~では、最前線で作業にあたった方々の「生の声」をお伝えします。建設業者が果たした役割について再確認す るとともに、震災の実情を風化させないことを目的としております。
第34回は(株)かねまつ建設(陸前高田市)取締役専務 菊池秀明さんです。(株)かねまつ建設 菊池秀明さん(42歳:震災当時)
《職種》取締役専務
《啓開作業時の作業内容》オペレーター
「重機の力が必要だと改めて感じました」―当日の状況を教えてください
陸前高田市内でも内陸側の横田町で作業中でした。防災無線からは、「津波が高田松原の防波堤を超えたので避難してください」と聞こえてきました。作業を中止して、会社に戻ることにしました。高田町から国道340号線を市内に向かうと、気仙川をガレキが遡り、低い場所では道路上にもガレキがありました。それでも何が起きているのかが分からない状態でしたね。
竹駒まで来ると国道は通れません。裏道や林道、農免道などを通り、会社までたどり着きました。会社は無事で、辺りを見回すと見慣れた風景は何もなくなっています。母親と妻がいる家に向かうと、寸前で被害を免れていました。その夜は避難所になった高田第一中学校で過ごしました。高田松原近くで部活をしていたはずの息子は、翌日、別の避難所にいることを知って再会できました。―ガレキ撤去作業はいつからはじめましたか
12日の夜、市役所の担当者から建設業関係者に声が掛かりました。13日は、重機や作業員及び現場の状況把握などを行いました。14日の朝から、重機オペレーターとして作業を開始しました。
―どこから作業を始めたのですか
市の中心部に向かう国道340号線、高田第一中学校の入り口付近からです。流されてきたガレキが10m程の高さに積みあがっていました。ガレキの堆積で先が見えませんので、どこまで続くのかが不安でした。上から確認したところ、20m先までの堆積でした。その先はガレキが少なかったのですが、高田松原の松が沢山あったことを記憶しています。
最初は、ハサミやフォークといったガレキをつかむ機械がなかったので、バケットで横によけるという作業です。とにかく車が通れるようにしました。
その後、孤立している広田地区に道路をつなげるため、小友地区の啓開を行いました。始めのころは、孤立している地区に行けるように道路を開けることが最優先です。―犠牲になられた方が多く、かなり気を使っての作業だったと思います
流された人がいると分かっていたので、むやみに機械を動かすわけには行きません。小友地区では3人の方のご遺体を見つけました。その後は2人です。被災した方から頼まれて、家 族を探すこともありました。見つからず、なんと話して良いか分かりませんでしたね。
―市内の建設業者のほとんどが被災していましたね
幸いにも私の会社は社員、建物ともに無事でした。動ける4人程で、すぐに作業を進められました。多くの会社は、代表者や建物が津波の被害に合い、会社を続けることさえも分か らない状況だったと思います。その様な中で、徐々に作業に加わる人や会社が増えて行きました。
以前から市内業者の協会組織はあったのですが、会長は亡くなってしまいました。動ける会社が中心になって、仮の協会を立ち上げて少しずつ組織的に動くようになりました 。市役所の職員も犠牲者が多かった中で、残った職員と打ち合わせをしながら進めていきました。自宅が被災した作業員が多かったので、市役所からは食料を配給してもらいました。―作業を振り返ってみて感じたことや思いは
津波にしても土砂災害などにしても、人の力だけではどうしようもない、重機の力が必要だと改めて感じました。震災当日から動くことが出来ていればと思う時もありましたが、少 しは役に立てたのかなと思います。
(おわり)
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~
href="https://www.iwaken.or.jp/info/2015/03/04_1755.html">第38回(最終回) (株)山千(大槌町)代表取締役 山崎 真さん
href="https://www.iwaken.or.jp/info/2015/02/21_1742.html">第37回 (株)藤原組(大槌町)専務取締役 藤原 士さん
第36回 松村建設(株)(大槌町)土木部長 松村康文さん
第35回 (株)共立土木(陸前高田市)工事課長 鈴木正幸さん
第34回 (株)かねまつ建設(陸前高田市)取締役専務 菊池秀明さん
第33回 (株)長谷川建設(陸前高田市)営業部長 吉田昭彦さん
第32回 南建設(株)(軽米町)取締役社長室長 田中一也さん
第31回 (株)中舘建設(二戸市)土木部長 大鳥義博さん
第30回 成和建設(株)(花巻市)重機車両部執行役員部長 民部田正道さん
第29回 (株)小原建設(北上市)小田島愼さん
第28回 髙惣建設(株)(奥州市)高田営業所長 小野寺正晴さん
第27回 (株)山友建設(一関市)熊谷堅美さん
第26回 (株)山喜建設(一関市)三浦公夫さん
第25回 横田建設(株)(一関市)高田営業所長 新沼克則さん
第24回 鈴木工材(株)(一関市)菊地勝則さん
第23回 宇部建設(株)(一関市)工事副長 千田祐欣さん
第22回 (有)矢萩建設(一関市)重機主任 関村一男さん
第21回 吉田建設(株)(盛岡市)三浦一春さん
第20回 盛岡舗道(株)(盛岡市)機械係長 高橋直美さん
第19回 三陸土建(株)(盛岡市)伊藤成美さん
第18回 松田重機工業(株)(遠野市)重機部長 菊池隆悦さん
第17回 佐藤工業(株)(遠野市)飯森清幸さん
第16回 (株)テラ(遠野市)常務取締役 小笠原秀夫さん
第15回 (株)晴山石材建設(野田村)上川寿隆さん
第14回 (株)晴山組(野田村)山田 勉さん
第13回 兼田建設(株)(久慈市)大尻明男さん
第12回 佐藤建設(株)(田野畑村)常務取締役 片座康行さん
第11回 富山建設(有)(山田町)代表取締役 富山由光さん
第10回 三好建設(株)(宮古市)土木部次長 小川 司さん
第9回 大崎建設(株)(田野畑村)橘 良友さん
第8回 工藤建設(株)(岩泉町)土木部技士 西倉淳也さん
第7回 刈屋建設(株)(宮古市)五十嵐 和朗さん
第6回 (株)小松組(大船渡市)代表取締役 小松 格さん
第5回 (株)青紀土木(釜石市)萬 寛さん
第4回 佐野建設(株)(釜石市)八重樫充さん
第3回 新光建設(株)(釜石市)工事課長 中村 明さん
第2回 (株)中澤組(大船渡市)機材主任 霜山 隆さん
第1回 (有)熊谷技工(大船渡市)専務取締役 熊谷芳男さん
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