いわけんブログ
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~(第13回)
2014年5月20日岩手県建設業協会
東日本大震災における道路啓開等作業従事者証言集
東日本大震災における被災現場の最前線で、地元建設業者は人命救助活動や道路啓開作業、応急・復旧作業などにあたりました。その活動は、震災当日から翌日にかけて始まっていました。
地元を熟知して、重機類を保有する地元建設業者は当初、緊急車両などの通行を確保する為の道路啓開作業(1車線だけでも通行できるようにする)が主な活動でした。行政や地元住民との信頼関係を築いていたことが迅速な活動につながりました。
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~では、最前線で作業にあたった方々の「生の声」をお伝えします。建設業者が果たした役割について再確認するとともに、震災の実情を風化させないことを目的としております。
第13回は久慈市の兼田建設(株) 大尻明男さんです。兼田建設(株) 大尻明男さん(47歳:震災当時)
《職種》現場監督
《啓開作業時の作業内容》指示係兼オペレーター
「自分の被災を意識する余裕もなく、作業に集中の毎日」
―震災当日はどこにいらっしゃいましたか。
芦が沢にある国道45号の現場でした。私の家が久慈市内の海沿いにあるので、家族の安否を確認し高台に避難させてから現場に帰りました。そこから現場中止を掛けて、午後4時ごろまでには現場を撤収しました。
私は再度家に戻りましたが、会社の方は、震災直後からバリケードの設置や幹線道路の規制などに当たっていました。これは災害協定ではなく、県の道路維持業務の一環です。―立ち入ったことを聞いて恐縮ですが、ご自宅は無事だったのですか。
家は津波被害を受けていました。その日は親戚の家、翌日からは弟の家に世話になりながら、一週間程度は人力で自宅周辺のがれき撤去をしていました。会社側も私の事情を汲んで、理解してくれました。
―現場の作業に復帰したのは、どの段階からですか。
野田村の新山地区でがれきの撤去作業に、17日から入りました。まずはライフラインを確保するため、道路を通すことが一番の課題でした。
―現場に入られて、どのような思いをもたれましたか。
野田村が壊滅状態にあるという話は聞いていたのですが、やはり現場を見たときは唖然としました。幸いなことに親戚は無事だったのですが、十府ケ浦にある母の実家は被災しました。
もっとも一旦仕事に入ってしまえば、自分や親戚の被災などを意識している余裕はなかったですね。とにかくこの現場を一日も早く片付け、次の現場に入ろうという意識しかなかったと思います。―現場での作業体制は。また作業を進める上で、どのような課題がありましたか。
機械類はショベル、4トンダンプ、バックホウなど。人員は7~8人ぐらいで、オペレーターと作業員、誘導員は兼務という形を取りました。現地は道幅が狭い割には交通量が多かったので、大型車や重機の接触など車両系の事故には細心の注意を払いました。
―野田村の現場が一段落した後は、どの現場に入ったのですか。
久慈市平沢のがれき集積所で指示役と現場作業を担当しました。集積所には未選別のがれきが運ばれてきますから、一体どれぐらいの量があるんだろうと不安になりましたね。
―集積所でのご苦労も多かったのでは。
臭いや粉じんの対策にも苦労しましたが、がれきの中にどんな有害物質が入っているか分からず、常に気を遣いました。また沿岸南部でがれきから火災が発生したという話を聞いて、神経質になりましたね。ガス抜きのパイプを挿すなどの対策を取りました。
―一連の震災対応を通して、改めて思うことはありますか。
昭和58年の久慈大火を体験していることもあり、災害は起きるものという意識を持っていました。私自身は、現場に出ている間は仕事に集中できたのですが、その分家族には負担を掛けたのかなという思いはあります。
(おわり)
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~
href="https://www.iwaken.or.jp/info/2015/03/04_1755.html">第38回(最終回) (株)山千(大槌町)代表取締役 山崎 真さん
href="https://www.iwaken.or.jp/info/2015/02/21_1742.html">第37回 (株)藤原組(大槌町)専務取締役 藤原 士さん
第36回 松村建設(株)(大槌町)土木部長 松村康文さん
第35回 (株)共立土木(陸前高田市)工事課長 鈴木正幸さん
第34回 (株)かねまつ建設(陸前高田市)取締役専務 菊池秀明さん
第33回 (株)長谷川建設(陸前高田市)営業部長 吉田昭彦さん
第32回 南建設(株)(軽米町)取締役社長室長 田中一也さん
第31回 (株)中舘建設(二戸市)土木部長 大鳥義博さん
第30回 成和建設(株)(花巻市)重機車両部執行役員部長 民部田正道さん
第29回 (株)小原建設(北上市)小田島愼さん
第28回 髙惣建設(株)(奥州市)高田営業所長 小野寺正晴さん
第27回 (株)山友建設(一関市)熊谷堅美さん
第26回 (株)山喜建設(一関市)三浦公夫さん
第25回 横田建設(株)(一関市)高田営業所長 新沼克則さん
第24回 鈴木工材(株)(一関市)菊地勝則さん
第23回 宇部建設(株)(一関市)工事副長 千田祐欣さん
第22回 (有)矢萩建設(一関市)重機主任 関村一男さん
第21回 吉田建設(株)(盛岡市)三浦一春さん
第20回 盛岡舗道(株)(盛岡市)機械係長 高橋直美さん
第19回 三陸土建(株)(盛岡市)伊藤成美さん
第18回 松田重機工業(株)(遠野市)重機部長 菊池隆悦さん
第17回 佐藤工業(株)(遠野市)飯森清幸さん
第16回 (株)テラ(遠野市)常務取締役 小笠原秀夫さん
第15回 (株)晴山石材建設(野田村)上川寿隆さん
第14回 (株)晴山組(野田村)山田 勉さん
第13回 兼田建設(株)(久慈市)大尻明男さん
第12回 佐藤建設(株)(田野畑村)常務取締役 片座康行さん
第11回 富山建設(有)(山田町)代表取締役 富山由光さん
第10回 三好建設(株)(宮古市)土木部次長 小川 司さん
第9回 大崎建設(株)(田野畑村)橘 良友さん
第8回 工藤建設(株)(岩泉町)土木部技士 西倉淳也さん
第7回 刈屋建設(株)(宮古市)五十嵐 和朗さん
第6回 (株)小松組(大船渡市)代表取締役 小松 格さん
第5回 (株)青紀土木(釜石市)萬 寛さん
第4回 佐野建設(株)(釜石市)八重樫充さん
第3回 新光建設(株)(釜石市)工事課長 中村 明さん
第2回 (株)中澤組(大船渡市)機材主任 霜山 隆さん
第1回 (有)熊谷技工(大船渡市)専務取締役 熊谷芳男さん
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