いわけんブログ
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~(第36回)
2015年2月10日岩手県建設業協会
東日本大震災における道路啓開等作業従事者証言集
東日本大震災における被災現場の最前線で、地元建設業者は人命救助活動や道路啓開作業、応急・復旧作業などにあたりました。その活動は、震災当日から翌日にかけて始まってい ました。
地元を熟知して、重機類を保有する地元建設業者は当初、緊急車両などの通行を確保する為の道路啓開作業(1車線だけでも通行できるようにする)が主な活動でした。行政や 地元住民との信頼関係を築いていたことが迅速な活動につながりました。
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~では、最前線で作業にあたった方々の「生の声」をお伝えします。建設業者が果たした役割について再確認するとともに、震災の実情を風化させないことを目的としております。
第36回は松村建設(株)(大槌町)土木部長 松村康文さんです。松村建設(株)松村康文さん(47歳:震災当時)
《職種》土木部長
《啓開作業時の作業内容》オペレーター
「1人でも2人でも見つけてあげたい」―震災の日のことを聞かせてください
地震は会社にいる時でした。吉里吉里にある自宅に一度戻り、船を見るために海に向かいました。波が渦を巻いていて、「津波が来るぞ」と直感しました。浪板にある親せきのところに寄り、戻ってみると自宅を含め、町全体が波に飲みこまれている状態でした。
次の日、生存者がいるかもしれないと思い、町の中を歩いて回りました。その後、地域の消防団から頼まれ、遺体安置所に犠牲者を運ぶ手伝いを2日ほどやっていました。―大槌は火災の被害もありましたね
吉里吉里は火災がなかったのですが、大槌方面に炎の明りが見え、プロパンが爆発するパンパンという音が聞こえたのを覚えています。あのような惨状の中、社長も会社の再生を熟慮したと思います。社長の態度を見て、「やるんだな、始めるんだな」というものを感じました。
―ガレキ撤去の作業に入ったのは
1週間目くらいに町内の会社で連合を組織しました。最初は6社で10数人だったと思います。当社を拠点にして動くようになり、徐々に役場や自衛隊との連携も図っていきました。
町長をはじめ、多くの役場の職員が亡くなりました。役場が機能するまでに時間がかかりましたから、自衛隊にかなり助けられたと思います。―何もない状況での作業だったと思います
人手がない、機械がない、燃料がない、食べ物がない状況から始まりました。燃料は自社及び町内のガソリンスタンドから協力を得て、(株)山千さんが配給を行いました。食べ物は支援物資や炊き出しのおにぎりなどを役場から支給してもらいました。
携帯が通じませんから、それぞれの会社の社長や専務などが直接回っていました。連絡事項を伝えながら、必要なものを聞いたり、食べ物を配ったりしていました。―松村さんの作業内容は
始めは道路のガレキ撤去です。その後1カ月、重機での遺体捜索を自衛隊の人と一緒に行いました。ガレキの上に重機で乗ってご遺体を傷付けることがないよう、慎重に作業を進めました。
―精神的にも厳しい作業だったのでは
最初はきついものがありました。そのうち、1人でも2人でも見つけてあげたいという気持ちが強くなりました。手作業で家族や知人を探している人もいました。「見つけて欲しい」、「この辺りを探して欲しい」と声を掛けられたこともあります。
私自身は6名のご遺体を見つけましたが、全員が五体満足ではありません。損傷が激しい方などは身元が分かっていれば良いのですが...。今でも見つからない人が結構いますからね。―自宅が被災している中での作業は大変だったと思います
しばらく休めませんでしたので、私自身は自宅の片づけは何もできませんでした。兄弟や家族に頼りっぱなしで、負担を掛けてしまいました。多くの人が同じ様な状況だったと思います。
―今回の震災で教訓はありますか
これまで大きな津波の経験がなく、地震の際の対応を会社で決めていませんでした。震災では6人の同僚を失いました。河口近くにあった会社に戻って亡くなった者もいます。今は、地震が起きたら逃げることと、逃げたあとの集合場所を決めています。
(おわり)
『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~
href="https://www.iwaken.or.jp/info/2015/03/04_1755.html">第38回(最終回) (株)山千(大槌町)代表取締役 山崎 真さん
href="https://www.iwaken.or.jp/info/2015/02/21_1742.html">第37回 (株)藤原組(大槌町)専務取締役 藤原 士さん
第36回 松村建設(株)(大槌町)土木部長 松村康文さん
第35回 (株)共立土木(陸前高田市)工事課長 鈴木正幸さん
第34回 (株)かねまつ建設(陸前高田市)取締役専務 菊池秀明さん
第33回 (株)長谷川建設(陸前高田市)営業部長 吉田昭彦さん
第32回 南建設(株)(軽米町)取締役社長室長 田中一也さん
第31回 (株)中舘建設(二戸市)土木部長 大鳥義博さん
第30回 成和建設(株)(花巻市)重機車両部執行役員部長 民部田正道さん
第29回 (株)小原建設(北上市)小田島愼さん
第28回 髙惣建設(株)(奥州市)高田営業所長 小野寺正晴さん
第27回 (株)山友建設(一関市)熊谷堅美さん
第26回 (株)山喜建設(一関市)三浦公夫さん
第25回 横田建設(株)(一関市)高田営業所長 新沼克則さん
第24回 鈴木工材(株)(一関市)菊地勝則さん
第23回 宇部建設(株)(一関市)工事副長 千田祐欣さん
第22回 (有)矢萩建設(一関市)重機主任 関村一男さん
第21回 吉田建設(株)(盛岡市)三浦一春さん
第20回 盛岡舗道(株)(盛岡市)機械係長 高橋直美さん
第19回 三陸土建(株)(盛岡市)伊藤成美さん
第18回 松田重機工業(株)(遠野市)重機部長 菊池隆悦さん
第17回 佐藤工業(株)(遠野市)飯森清幸さん
第16回 (株)テラ(遠野市)常務取締役 小笠原秀夫さん
第15回 (株)晴山石材建設(野田村)上川寿隆さん
第14回 (株)晴山組(野田村)山田 勉さん
第13回 兼田建設(株)(久慈市)大尻明男さん
第12回 佐藤建設(株)(田野畑村)常務取締役 片座康行さん
第11回 富山建設(有)(山田町)代表取締役 富山由光さん
第10回 三好建設(株)(宮古市)土木部次長 小川 司さん
第9回 大崎建設(株)(田野畑村)橘 良友さん
第8回 工藤建設(株)(岩泉町)土木部技士 西倉淳也さん
第7回 刈屋建設(株)(宮古市)五十嵐 和朗さん
第6回 (株)小松組(大船渡市)代表取締役 小松 格さん
第5回 (株)青紀土木(釜石市)萬 寛さん
第4回 佐野建設(株)(釜石市)八重樫充さん
第3回 新光建設(株)(釜石市)工事課長 中村 明さん
第2回 (株)中澤組(大船渡市)機材主任 霜山 隆さん
第1回 (有)熊谷技工(大船渡市)専務取締役 熊谷芳男さん
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