東日本大震災における道路啓開等作業従事者証言集

 東日本大震災における被災現場の最前線で、地元建設業者は人命救助活動や道路啓開作業、応急・復旧作業などにあたりました。その活動は、震災当日から翌日にかけて始まってい ました。

 地元を熟知して、重機類を保有する地元建設業者は当初、緊急車両などの通行を確保する為の道路啓開作業(1車線だけでも通行できるようにする)が主な活動でした。行政や 地元住民との信頼関係を築いていたことが迅速な活動につながりました。

 『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~では、最前線で作業にあたった方々の「生の声」をお伝えします。建設業者が果たした役割について再確認するとともに、震災の実情を風化させないことを目的としております。

 第38回(最終回)は(株)山千(大槌町) 山崎 真さんです。

(株)山千 山崎 真さん(40 歳:震災当時)
《職種》代表取締役
《啓開作業時の作業内容》指示役・ダンプ運転手

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「残った人たちが力を合わせて」

―震災当日はどこにいらっしゃったのですか

 弊社はブロック製造もしているので、当日はJIS関係の講習で仙台市にいました。信号は止まっていましたが、仙台市内の渋滞はさほどではなかったです。ラジオの情報は入ってくるのですが、肝心の大槌の状況が全く分からず、焦りだけが大きくなりました。

 盛岡市経由で土坂峠を抜けて大槌に向かう途中、中学生ぐらいの男の子を金沢付近で拾ったんですね。その子が「町が壊滅状態だ」と言っていたのですが、その時は意味を理解でませんでした。会社に戻ると社員が避難してきており、やはり「町の中には入れない」と。町の中は真っ暗なのに火の海で、ガスボンベが破裂する音が聞こえていました。とにかく社員や家族が心配だったのですが、どうすることもできず心配しながら夜を明かしました。

 

―翌日から何か会社として対応できたのですか

 家族を探しながら町の状況がつかめてきたこと、社員が家族を連れて会社に避難していたことなど断片的には覚えていますが、実はこの前後の記憶が曖昧で・・・。うちの会社は被災区域の外だったので、会社の車で水を運んだり、発電機の修理をしたりとできる限りの手伝いはしていました。それが12日か13日頃だったと思います。

 

―現地の道路啓開に入ったのはいつからですか

 確か14日か15日ぐらいだったと記憶しています。先行して動いている会社もあり、混沌としていたというイメージだけは残っているのですが。道路啓開の作業では、最初は重機も少なかったので重機の手元とダンプの運転に当たりました。本格的に重機が入ってからは免許を持っている社員がオペレーターとして現地に入り、私と残った社員で燃料の確保と供給を担当しました。

 最初は被災した市街地のスタンドに協力してもらいましたが、タンクの半分は海水が混ざっており、使い物になりませんでした。ドラム缶に手動で移し、トラックで運搬して手動で重機に給油するのはやはり大変でしたね。

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―皆さん休みもなかなか取れなかったようですが

 はじめの頃は会社に寝泊まりしていましたね。支援物資が届くまでは布団もなかったので、古い吸出し防止材にくるまって寒さをしのぐという感じでした。それでも社員が必死でがんばる姿に、私も励まされました。

 社員も一人ひとりに家族があり、津波の被害も受けています。それでも被災現場で不満も言わずに働いてくれました。それは決して格好の良いものではないのでしょうが、一生懸命働く姿勢には本当に心を打たれました。

 

―聞きづらいのですが、山崎さんはご家族が犠牲になられたと伺いました

 母親と姪が亡くなっています。上手く言えないのですが、自宅が流された時には、何もかも無くなったと絶望的な気持ちになりました。だから本当に立派なことは何も言えないんですよ。それでも地元の建設業の一員として、これからも町の復興に関わっていきたい。一人の力は限られていますが、社員や生き残った家族と力を合わせ、町の復興に向けて歩みを進めていくしかないと思っています。

 


(おわり)


『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~
第38回(最終回) (株)山千(大槌町)代表取締役 山崎 真さん
第37回 (株)藤原組(大槌町)専務取締役 藤原 士さん
第36回 松村建設(株)(大槌町)土木部長 松村康文さん
第35回 (株)共立土木(陸前高田市)工事課長 鈴木正幸さん
第34回 (株)かねまつ建設(陸前高田市)取締役専務 菊池秀明さん
第33回 (株)長谷川建設(陸前高田市)営業部長 吉田昭彦さん
第32回 南建設(株)(軽米町)取締役社長室長 田中一也さん
第31回 (株)中舘建設(二戸市)土木部長 大鳥義博さん
第30回 成和建設(株)(花巻市)重機車両部執行役員部長 民部田正道さん
第29回 (株)小原建設(北上市)小田島愼さん
第28回 髙惣建設(株)(奥州市)高田営業所長 小野寺正晴さん
第27回 (株)山友建設(一関市)熊谷堅美さん
第26回 (株)山喜建設(一関市)三浦公夫さん
第25回 横田建設(株)(一関市)高田営業所長 新沼克則さん
第24回 鈴木工材(株)(一関市)菊地勝則さん
第23回 宇部建設(株)(一関市)工事副長 千田祐欣さん
第22回 (有)矢萩建設(一関市)重機主任 関村一男さん
第21回 吉田建設(株)(盛岡市)三浦一春さん
第20回 盛岡舗道(株)(盛岡市)機械係長 高橋直美さん
第19回 三陸土建(株)(盛岡市)伊藤成美さん
第18回 松田重機工業(株)(遠野市)重機部長 菊池隆悦さん
第17回 佐藤工業(株)(遠野市)飯森清幸さん
第16回 (株)テラ(遠野市)常務取締役 小笠原秀夫さん
第15回 (株)晴山石材建設(野田村)上川寿隆さん
第14回 (株)晴山組(野田村)山田 勉さん
第13回 兼田建設(株)(久慈市)大尻明男さん
第12回 佐藤建設(株)(田野畑村)常務取締役 片座康行さん
第11回 富山建設(有)(山田町)代表取締役 富山由光さん
第10回 三好建設(株)(宮古市)土木部次長 小川 司さん
第9回 大崎建設(株)(田野畑村)橘 良友さん
第8回 工藤建設(株)(岩泉町)土木部技士 西倉淳也さん
第7回 刈屋建設(株)(宮古市)五十嵐 和朗さん
第6回 (株)小松組(大船渡市)代表取締役 小松 格さん
第5回 (株)青紀土木(釜石市)萬 寛さん
第4回 佐野建設(株)(釜石市)八重樫充さん
第3回 新光建設(株)(釜石市)工事課長 中村 明さん
第2回 (株)中澤組(大船渡市)機材主任 霜山 隆さん
第1回 (有)熊谷技工(大船渡市)専務取締役 熊谷芳男さん



『記録誌第3号「記憶を思いに 未来につなげる」~震災復興5年の記録 これからも地域とともに~』に収録しております。