東日本大震災における道路啓開等作業従事者証言集

 東日本大震災における被災現場の最前線で、地元建設業者は人命救助活動や道路啓開作業、応急・復旧作業などにあたりました。その活動は、震災当日から翌日にかけて始まっていました。

 地元を熟知して、重機類を保有する地元建設業者は当初、緊急車両などの通行を確保する為の道路啓開作業(1車線だけでも通行できるようにする)が主な活動でした。行政や地元住民との信頼関係を築いていたことが迅速な活動につながりました。

 『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~では、最前線で作業にあたった方々の「生の声」をお伝えします。建設業者が果たした役割について再確認するとともに、震災の実情を風化させないことを目的としております。

(第16回より、内陸からの後方支援を掲載しています)

 第21回は吉田建設(株)(盛岡市)の三浦 一春さんです。

吉田建設(株) 三浦 一春さん(38 歳:震災当時)
《職種》土工・ダンプ運転手
《啓開作業時の作業内容》ダンプ運転手

shougen140829 (1)



「ダンプの中で穏やかな海を見ながら」

―宮古市内ではどのような作業を

 4月に入ってすぐ、鍬ケ崎のがれき運搬に1週間ほど当たりました。指定された場所でがれきを集積して、出崎埠頭の仮置き場に運搬する作業が中心です。

 土地勘はありませんが、指示された先に自衛隊のトラックなども見えて、道に迷うことは無かったです。また一般車両は警察が通行止めにして、作業経路は一方通行にルートを決めていたので、危険な思いはしませんでした。

 

―被災地支援の仕事に不安はありませんでしたか

 特に不安は無かったのですが、緊急地震速報が頻繁に出ていた時期でしたから、朝礼中に全員の携帯が一斉に鳴ったときは慌てましたね。自衛隊や地元の人は冷静に対応していましたが。

 ダンプに乗っている時にも山側の高台を確認しながら、津波が来たらどこに逃げるか考えていました。リュックの中には貴重品や非常用品などをまとめて、万が一の時にはそれ一つを持って逃げられるようにしていました。

 

―タイヤのパンクなども心配ですが

 パンクは避けられないものと最初から割り切っていましたが、幸いパンクはしませんでした。また細い道に入るときなどは、がれきや家の基礎を踏まないよう、解体した家から出た畳を自衛隊の人が敷いてくれました。

 

―現地での食事はどのように

 現場に向かう途中、コンビニで調達です。当時は品不足でしたが贅沢は言えませんから、お腹にたまるものなら何でも、という感じで。ダンプの中で食事をしている時、目の前に広がるゆらゆらと静かな海面を見ながら、今はこんなに穏やかな海が恐ろしい被害をもたらしたのかと、不思議な感覚にとらわれました。

shougen140829 (2)

―現地で印象に残っていることは

 持ち主が解体を許可した建物に、スプレーで「OK」と書かれているのを見るのは悲しかったですね。あぁもう少しでこの家も壊されてしまうのかと思いながら走ったことを覚えています。家を解体する際に見つかった写真やアルバムは持ち主の人に渡しており、私も額縁の裏から見つけたへそくりを手渡したことがあります。被災された方が少しでも笑顔を見せてくれたことで、もっと頑張ろうという気持ちになれました。

 また、運転しながら警察の方が集まっているところも見ました。きっとご遺体が見つかったのでしょう。亡くなった人は気の毒ですが、行方不明のままではなく、一日も早く家族のもとに帰ってほしいと思いました。

 

―1週間の作業が終わって、どのような思いを持たれましたか

 現地で「子どものカバンを探しています」という張り紙を見かけたんですよ。きっとお子さんが大切にしていたんでしょうね。作業を手伝うときに探したのですが、結局見つけることができませんでした。これが心残りといえば、そうなるんですかね。カバンを見つけてあげたかったですね...。



(おわり)


『そのとき地元建設業は』~3.11東日本大震災、最前線の記憶~
第38回(最終回) (株)山千(大槌町)代表取締役 山崎 真さん
第37回 (株)藤原組(大槌町)専務取締役 藤原 士さん
第36回 松村建設(株)(大槌町)土木部長 松村康文さん
第35回 (株)共立土木(陸前高田市)工事課長 鈴木正幸さん
第34回 (株)かねまつ建設(陸前高田市)取締役専務 菊池秀明さん
第33回 (株)長谷川建設(陸前高田市)営業部長 吉田昭彦さん
第32回 南建設(株)(軽米町)取締役社長室長 田中一也さん
第31回 (株)中舘建設(二戸市)土木部長 大鳥義博さん
第30回 成和建設(株)(花巻市)重機車両部執行役員部長 民部田正道さん
第29回 (株)小原建設(北上市)小田島愼さん
第28回 髙惣建設(株)(奥州市)高田営業所長 小野寺正晴さん
第27回 (株)山友建設(一関市)熊谷堅美さん
第26回 (株)山喜建設(一関市)三浦公夫さん
第25回 横田建設(株)(一関市)高田営業所長 新沼克則さん
第24回 鈴木工材(株)(一関市)菊地勝則さん
第23回 宇部建設(株)(一関市)工事副長 千田祐欣さん
第22回 (有)矢萩建設(一関市)重機主任 関村一男さん
第21回 吉田建設(株)(盛岡市)三浦一春さん
第20回 盛岡舗道(株)(盛岡市)機械係長 高橋直美さん
第19回 三陸土建(株)(盛岡市)伊藤成美さん
第18回 松田重機工業(株)(遠野市)重機部長 菊池隆悦さん
第17回 佐藤工業(株)(遠野市)飯森清幸さん
第16回 (株)テラ(遠野市)常務取締役 小笠原秀夫さん
第15回 (株)晴山石材建設(野田村)上川寿隆さん
第14回 (株)晴山組(野田村)山田 勉さん
第13回 兼田建設(株)(久慈市)大尻明男さん
第12回 佐藤建設(株)(田野畑村)常務取締役 片座康行さん
第11回 富山建設(有)(山田町)代表取締役 富山由光さん
第10回 三好建設(株)(宮古市)土木部次長 小川 司さん
第9回 大崎建設(株)(田野畑村)橘 良友さん
第8回 工藤建設(株)(岩泉町)土木部技士 西倉淳也さん
第7回 刈屋建設(株)(宮古市)五十嵐 和朗さん
第6回 (株)小松組(大船渡市)代表取締役 小松 格さん
第5回 (株)青紀土木(釜石市)萬 寛さん
第4回 佐野建設(株)(釜石市)八重樫充さん
第3回 新光建設(株)(釜石市)工事課長 中村 明さん
第2回 (株)中澤組(大船渡市)機材主任 霜山 隆さん
第1回 (有)熊谷技工(大船渡市)専務取締役 熊谷芳男さん



『記録誌第3号「記憶を思いに 未来につなげる」~震災復興5年の記録 これからも地域とともに~』に収録しております。